2003 Fiscal Year Annual Research Report
EBウイルスRK-BARF0による上皮細胞癌化及び腫瘍形成におよぼす影響の解析
Project/Area Number |
15790243
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
草野 秀一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (10350662)
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Keywords | ウイルス / 発現制御 / 感染症 / タンパク質 / 遺伝子 |
Research Abstract |
本研究は、Epstein-Barrウイルス(EBV)による上皮細胞がん化機構を解明することを目的に、EBV陽性上咽頭がんで多量に発現されているmRNAにコードされているタンパク質であるRK-BARF0の宿主細胞内における機能解析を遂行した。 初めに、RK-BARF0とWntシグナルの抑制因子として知られる宿主タンパク質であるI-mfaとの相互作用を解析した。免疫沈降実験の結果、RK-BARF0とI-mfaは細胞内で特異的に相互作用いた。この相互作用には、RK-BARF0の159〜179番目のアミノ酸領域およびI-mfaの176〜189番目のアミノ酸領域が必要であった。また、この相互作用によりRK-BARF0の核移行は阻害され、細胞質中に保持されることも明らかになった。 次に、この相互作用が、I-mfa依存的なWntシグナルの調節におよぼす影響を解析した。I-mfaは、TCF/LEFとの相互作用に重要であるC末端の217〜246番目のアミノ酸領域依存的にWntシグナル特異的な転写を抑制することがTCF/LEF結合配列を用いたレポーターアッセイにより、本研究により明らかになった。そして、RK-BARF0の発現は、このI-mfa依存的な転写抑制を強力に解除した。この作用は、I-mfaとTCF-LEFとの結合にRK-BARF0が競合的に働くことにより、I-mfaとTCF/LEFの結合が阻害されるために起こることが、in vitroで翻訳したRK-BARF0を用いた免疫沈降実験により明らかとなった。 Wntシグナルは、ヒト細胞のがん化に密接に関係があると注目されているシグナル伝達経路であり、RK-BARF0がI-mfaの機能を阻害することでWntシグナルに促進的に働くという本研究によって得られた知見は、EBVによる上皮細胞のがん化機構を理解する上で非常に興味深いものであった。
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Research Products
(1 results)