2004 Fiscal Year Annual Research Report
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)による胃腸傷害の発生とCOX阻害との関連性-COX-1阻害により誘導されるCOX-2の役割と誘導機序-
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15790273
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 晶子 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (30329940)
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Keywords | NSAIDs / COX-1 / COX-2 / 胃粘膜傷害 / 胃潰瘍 / プロスタグランジン |
Research Abstract |
非ステロイド系抗炎症薬の胃粘膜に対する影響について、ストレス誘発胃潰瘍モデルおよび焼灼胃潰瘍モデルを用いて検討し、以下のような知見を得た。 1.寒冷拘束ストレス誘起胃粘膜損傷の発生に対し、COX-1選択的阻害薬は損傷増悪作用を示すが、COX-2選択的阻害薬は損傷発生にほとんど悪影響を及ぼさず、主にCOX-1由来のPGが胃粘膜恒常性の維持に重要であることが明らかとなった。さらに、短時間ストレス前負荷(マイルドストレス)はストレス胃潰瘍の発生を有意に抑制すること、このマイルドストレス誘起胃粘膜保護作用はCOX-1阻害薬のみならずCOX-2阻害薬によっても消失することから、両COXアイソザイムがマイルドストレス誘起胃粘膜保護作用に関与していることが判明した。ストレス負荷後の体温低下は、マイルドストレスの前負荷により抑制されたが、マイルドストレスによる体温上昇作用は、NSAIDおよびキナクリンの投与により抑制された。さらに、視床下部においては恒常的にCOX-1およびCOX-2の発現が確認されていることから、マイルドストレス負荷により活性化されたPLA2がCOXの基質の切り出しを増加させ、体温上昇に関与している可能性が示唆された。 2.焼灼胃潰瘍の治癒に対しインドメタシンおよびCOX-2選択的阻害薬の投与は胃潰瘍部のPG産生を有意に減少させ、治癒遅延作用を示したが、COX-1選択的阻害薬の投与は潰瘍部のPG産生を有意に減少させるにもかかわらず、治癒遅延作用を示さなかったことから、胃潰瘍の治癒には主にCOX-2由来のPGが重要であることが示唆された。増殖因子であるbFGFおよびVEGFの発現は、焼灼胃潰瘍の辺縁部において増強された。インドメタシン、COX-2選択的阻害薬の投与は増殖因子の発現増大を抑制したが、COX-1選択的阻害薬の投与は胃潰瘍部における増殖因子の発現に影響を与えなかった。これらの結果から、COX-2由来のPGは増殖因子の発現に重要であることが示唆された。
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Research Products
(5 results)