2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790288
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山本 博一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (30316088)
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Keywords | モルモット / スチレン / ループ利尿剤 / 複合曝露 |
Research Abstract |
産業現場における聴器に影響を及ぼす要因であるスチレンと聴器毒性のある薬剤フロセミド(ループ利尿剤)の複合影響をモルモットを用いて調べた。聴覚への影響の評価には聴性脳幹反応による聴覚閾値と走査電子顕微鏡による蝸牛の組織学的検索を用いた。まず、スチレン単独、フロセミド単独(700、900ppm)の曝露実験を行った結果、スチレン900ppmを1日8時間21日間連続曝露で聴覚閾値の有意な上昇を認め、組織学的検索で蝸牛の有毛細胞の脱落を認めた。また、フロセミド1日60、80mg/kgを14日間連続投与した結果、聴覚閾値にはほとんど変動がなく組織学的にも変化が見られなかった。これらのことから、スチレン1日8時間21日間連続曝露で聴覚に影響を及ぼす曝露濃度は900ppmであり、フロセミド60、80mg/kgは聴覚に影響を及ぼさない投与量であることがわかった。 単独曝露実験の結果を受けて、スチレンとフロセミドの複合影響を調べた。複合曝露の実験条件は、スチレン900ppmを1日8時間21日間曝露し、スチレン曝露8日目より60、80mg/kgのフロセミドをスチレン曝露前に腹腔内投与した。その結果、スチレン単独曝露に比べ、複合曝露ではより大きな閾値の上昇が認められた。また組織学的な検索においても、スチレン単独曝露よりフロセミドと組み合わせることにより、より大きな有毛細胞の脱落が認められた。また60mg/kgよりも80mg/kgのほうが有毛細胞の障害の程度大きかった。これらのことから、スチレンとフロセミドと同時に曝露することで聴覚に明確な複合影響がみられた。フロセミドのような聴器毒性のある薬剤を投与されている労働者がスチレン等の曝露を受ける有害作業環境で働く場合、聴覚に対する影響が増強する可能性が示唆された。
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