2003 Fiscal Year Annual Research Report
前向きコホートおよびコホート内症例対照研究による糖尿病と膵がんリスクの関連
Project/Area Number |
15790307
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
林 櫻松 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50340302)
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Keywords | 膵がん / 糖尿病 / コホート研究 / 高インスリン血症 / リスク |
Research Abstract |
40-79歳の110,792人を対象とした文部科学省大規模コホート研究(the JACC Study)のデータを用いて、糖尿病歴と膵がん死亡リスクの関連を検討した。1988-1990のベースライン調査で自記式問診票より糖尿病に関する情報を収集し、1999年末まで対象者を追跡した。平均10年の追跡期間中、265(男129人、女136人)が膵がんで死亡した。統計解析では、比例ハザードモデルを用いて、相対危険度と95%信頼区間を算出し糖尿病歴と膵がん死亡リスクの関連を評価した。主な結果は以下の通りである。糖尿病歴がない者と比べて、糖尿病歴がある者の膵がん死亡リスクは男性で1.80(95%信頼区:1.04-3.12)、女性で1.82(95%信頼区間:1.00-3.31)と男女とも糖尿病歴が有意に膵がん死亡リスクを上昇させた。膵がんの合併症として糖尿病が出現するという影響を除くため、追跡してから2年以内の膵がん死亡者を除外し分析を行ったところ、糖尿病歴がある者の膵がんリスクは1.61(95%信頼区間:1.06-2.44)とリスク上昇が認められた。さらに、追跡期間を前半と後半に分け糖尿病と膵がんリスクの関連も検討した。前半では糖尿病歴がある者の膵がん死亡リスクは1.47であるのに対し、後半では1.49と明らかな差は認められなかった。 以上の結果より、日本人を対象とした大規模前向きコホート研究では、糖尿病歴が有意に膵がんの死亡リスクを上昇させたことが明らかにされた。糖尿病の基礎病態である高インスリン血症やインスリン抵抗性が膵がんの発生に関与していると考えられる。高インスリン血症や血清糖尿病関連指標が膵がんリスクを上昇させるかどうかという仮説を検証するために、コホート内症例対照研究で両者の関連を検討する予定である。
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