2003 Fiscal Year Annual Research Report
シンナー濫用者における精神・神経行動障害の発生メカニズムに関する実験的研究
Project/Area Number |
15790318
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
後藤田 貴子 徳島大学, 医学部, 助手 (50304506)
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Keywords | 法医学 / 薬物濫用 / トルエン / 免疫組織化学 / 神経栄養因子 / ストレス / ELISA |
Research Abstract |
シンナー濫用者は、うつ状態様を呈する一方で、抑制を欠如し興奮状態になるといわれている。近年、ストレスからうつ状態を引き起こし、それに伴い神経栄養因子、特に脳由来神経栄養因子BDNFが減少するということが報告されている。本研究では、「うつ状態」様の発生機序を明らかにする目的で、トルエンを吸入させたラットの脳を試料として、BDNFの局在およびタンパク濃度の変化を検討した。ウイスター系雄ラットを用い、トルエン(1,500ppm)を1日4時間,7日間吸入させた。免疫組織化学的に、人脳皮質、海馬、小脳をBDNFで染色したところ、顆粒細胞、錐体細胞に局在は認められたが、染色性に顕著な差は認められなかった。また、ELISA法を用いて大脳皮質、海馬、小脳、脳幹部、間脳、脊髄および血液についてBDNFのタンパク量の定量を行ったところ、間脳では、p<0.01で、小脳、脊髄では,p<0.10で有意に減少していた。海馬では、低下していたが有意差は認められなかった(p=0.1325)。しかし、大脳皮質、血液では有意に増加していた(p<0.10)。脳幹部では、増加していたが有意差は認められなかった(p=0.2583)。これまで、トルエン吸入によりラットの血中のコルチコステロン・ACTHが増加することを明らかにしてきた。ストレスによるコルチコステロンの増加が、神経栄養因子BDNFの減少を引き起こし、神経細胞障害を来たすとの報告がある。今回の結果から、間脳・海馬・小脳・脊髄に認められたBDNFの減少は、コルチコステロンの増加と関係していると考えられた。BDNFの減少による神経細胞障害が、トルエン吸入による「うつ状態」の誘因となる可能性が示唆された。
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