2003 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌の分子標的に対する系統的モノクローナル抗体作成とその診段・治療への応用
Project/Area Number |
15790339
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
筆宝 義隆 東京大学, 国際・産学共同研究センター, 助手 (30359632)
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Keywords | 胃癌 / モノクローナル抗体 / WWOX / 癌抑制遺伝子 |
Research Abstract |
我々は、胃癌細胞株OCUM-2MD3のゲノムサブトラクション解析により、候補癌抑制遺伝子WWOXのイントロンにホモ欠失を同定していたので機能未知のこの分子に対して胃癌での役割を検討するために世界に先駆けてモノクローナル抗体を作成し、発現解析を行い以下のことを明らかにした。 1.スプライシング異常による転写産物はタンパクとして不安定である OCUM-2MD3も含め、イントロンにホモ欠失を有する細胞ではスプライシング異常をきたすことが知られているが、これまでその役割は未解明であり、ドミナントネガティブに作用するという予測もあった。タンパクレベルの解析を行い、スプライシング異常による転写産物はタンパクとして不安定であり、プロテアソーム分解系で分解を受けてしまうこと、ひいては何らかの機能を発揮する可能性は低いことを明らかにした 2.WWOXタンパクの局在は主に核で、一部がミトコンドリアである これまで複数のグループから様々な報告がなされていたが、抗体の信頼性が低かったり、強制発現によるもので生理的でなかったりするなど局在に関しては結論が得られていなかった。今回特異的なモノクローナル抗体による免疫染色で内因性のWWOXタンパクが主に核に局在し、一部ミトコンドリアに存在するという結果を得た。さらに、培養条件により細胞が周密状態ではすべてが核に集積することをあらたに見出した。 3.正常組織での組織分布はステロイドホルモン産生臓器で高発現だった 過去のmRNAレベルでの検討から、全身で発現を認め、精巣、乳腺、卵巣などで高発現であることが報告されていた。配列がステロイド代謝酵素と似ていることから、ステロイドホルモン合成に関与するとの予測がされていた。今回免疫染色でこれらの臓器でやはり高発現であること、特に精巣ではライディッヒ細胞という男性ホルモン産生に特化した細胞でのみ発現を認め、正常組織での生理的な役割としてステロイドホルモン合成に関与する可能性が高いことを示した。 4.胃癌組織では逆に発現が亢進しているケースが多かった 候補癌抑制遺伝子として、癌組織では発現が減弱していることを予測したが、実際にはむしろ正常胃粘膜と比較して発現が亢進していることを明らかにした。これは、これまでのWWOXに関する研究に大きく修正をせまるものとして、単なる発現量の変化以外の癌抑制制御機構を想定する必要があることを示した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Watanabe A, Hippo Y, Taniguchi H et al.: "An opposing view on WWOX protein function as a tumor suppressor."Cancer Research. 63・24. 8629-8633 (2003)
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[Publications] Shimizu H, Taniguchi H, Hippo Y, et al.: "Characterization of the mouse Abcc12 gene and its transcript encoding an ATP-binding cassette transporter, an orthologue of human ABCC12."Gene. 310. 17-28 (2003)