2003 Fiscal Year Annual Research Report
新しい心不全遺伝子治療の研究―分泌型マトリックス蛋白の役割の検討より―
Project/Area Number |
15790405
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岩永 善高 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (80360816)
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Keywords | 心不全 / 遺伝子治療 / マトリックス蛋白 |
Research Abstract |
Osteopontin(OPN)およびFibulin-5/DANCEは、マトリックスの構成と安定化に関与する分泌型の蛋白であり、インテグリン(特にαvβ3)のリガンドである。しかしながら、これらの分泌型のインテグリンリガンド蛋白の心筋における役割は不明である。そこで、当研究においては、これらの蛋白の心肥大・心不全における役割を明らかにすることを目標とした。 まず、高血圧心肥大から心不全へと移行を示すダールラット心不全モデルを用いて発現形式、活性化機序およびレセプターである心筋におけるインテグリンの検討を行った。その結果、心肥大期において、DANCEでは遺伝子(mRNA)発現は変化認めなかったがOPNでは3.3倍の発現亢進を認めた。しかしながら、心不全期に移行するとDANCE,OPNともに心肥大期に比しそれぞれ2、2.8倍の発現亢進を認め、それは蛋白レベルでも確認された。一方、レセプターのαvインテグリンの発現も2.3倍と亢進を認めた。アンギオテンシン受容体拮抗薬の慢性投与により心不全の発症が抑制されたが、その際心筋においてOPNでは、56%発現が抑制されたが、DANCEあるいはαvインテグリンでは有意な抑制は見られなかった。このことから、心不全の発症に関して、DANCEとOPNが異なる役割(例えばDANCEは心筋保護的に、OPNは心筋傷害的に働くなど)を果たしていること、あるいは、DANCE vs αvインテグリン、OPN vs αvインテグリンという関係が同等のものではないという可能性が示唆された。現在、心筋梗塞後心不全モデルについても検証中である。 次年度では、この結果を,ふまえて、DANCEとOPNの異なる役割を明らかにし、治療的応用を行うために、AAVベクターを用いて、心筋にDANCEとOPNの遺伝子導入を行い、心筋局所での高発現が及ぼす効果、影響を検討する予定である。
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[Publications] Yoshitaka Iwanaga et al.: "Chronic phospholamban inhibition prevents progressive cardiac dysfunction and pathological remodeling in post-infarction rats."Journal of Clinical Investigation. 113. 727-736 (2004)
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[Publications] Mitsuo Iwatate et al.: "In vivo high-efficiency transcoronary gene delivery and Cre-LoxP gene switching in the adult mouse heart."Gene Therapy. 10. 1814-1820 (2003)
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[Publications] Toshiaki Izumi et al.: "Reinduction of T-Type Calcium Channels by Endothelin-1 in Failing Hearts In Vivo and in Adult Rat Ventricular Myocytes In Vitro."Circulation. 108. 2530-2538 (2003)