Research Abstract |
1.低濃度エストロゲンによる新生内膜形成抑制効果の検討 低濃度エストロゲンが動脈硬化モデル動物(ラット頸動脈バルーン傷害モデル)の新生内膜形成を抑制するか否かを検討した.10週齢のウィスターラットに卵巣摘出し,4日後にエストラジオールを投与した.投与後3日後に左内頸動脈にバルーン傷害を施行し,2週間後に新生内膜形成を評価した.その結果,I/M比は,ラットの血漿エストラジオール濃度を上昇させることなく、濃度依存性に有意に減少した.このエストロゲン効果は,angiotensin II type 1 受容体拮抗剤と同様の効果であった.このことより,低濃度エストロゲン治療は,動脈硬化を予防する効果があると考えられる. 2.血管平滑筋細胞においてエストロゲン調節をうける遺伝子の検討 エストロゲンは,血管に対して,血管拡張,血管平滑筋増殖や遊走抑制など様々な作用をもつ.血管壁において,どのような遺伝子がエストロゲンにより制御されているかを検討した.ウィスターラットに卵巣摘出を行い,2週間後にエストラジオールを投与し,さらに2週間後に,大動脈の内皮細胞をとりだした.マイクロアレーを用いて,約7000の遺伝子を解析した.エストラジオール投与群と未投与群では,遺伝子発現が異なり,Caveolin-1,Id3a,二つのLIMタンパク(enigmaとSmLIM)がエストラジオール投与群において,有意に多く発現していた.PCR法およびラット血管平滑筋細胞を用いてのノーザンブロット法においても,同様の結果が得られた.メカニズムは明らかでないが,エストロゲンにより調節されるこれらの遺伝子が血管平滑筋細胞に影響を与えていると考えられる.
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