2003 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン分泌細胞におけるTRPM2チャネルの生理的意義に関する基礎研究
Project/Area Number |
15790471
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
石井 正和 昭和大学, 薬学部, 助手 (30307061)
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Keywords | 過酸化水素 / カルシウム / チャネル / β細胞 / 細胞障害 |
Research Abstract |
過酸化水素によるインスリン分泌細胞障害へのTRPM2チャネルの関与についてβ細胞株であるHIT-T15細胞(ハムスター由来β細胞株)とRIN-5F細胞(ラット由来β細胞株)を用いて検討した。はじめに各細胞におけるTRPM2 mRNA発現をRT-PCR法により検討した。その結果、HIT-T15細胞に比較して、RIN-5F細胞にTRPM2 mRNAが高発現していることが明らかになった。また、過酸化水素による細胞内カルシウム濃度変化について検討したところ、HIT-T15細胞ではほとんど細胞内のカルシウム濃度上昇が認められなかったのに対して、RIN-5F細胞では著しい細胞内のカルシウム濃度上昇が認められた。そこで以後の実験では、TRPM2が高発現していて、かつ過酸化水素によるカルシウム応答が認められたRIN-5F細胞を使用し、TRPM2の関与について検討した。その結果、過酸化水素処置により細胞内のカルシウム濃度上昇だけでなく細胞障害も認められ、これらはTRPM2アンチセンス処置により抑制された。また、カルシウム濃度上昇、細胞障害ともにヒドロキシラジカルの消去剤、2価鉄のキレート剤により抑制されたことから、過酸化水素によるRIN-5F細胞障害にはFenton反応を介して産生されるヒドロキシラジカルが関与していると思われる。さらに、HEK293細胞を用いたTRPM2チャネルの強制発現実験においても、過酸化水素処置によるカルシウム濃度上昇および細胞障害はヒドロキシラジカルの消去剤、2価鉄のキレート剤により抑制された。 以上の結果は、過酸化水素処置によるインスリン分泌細胞障害に、Fenton反応により生じたヒドロキシラジカルによるTRPM2チャネル活性化を介したカルシウム流入が関与している可能性を示唆している。
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