2003 Fiscal Year Annual Research Report
脳炎・脳症における免疫アレルギー機序:変異抗原による免疫療法の開発
Project/Area Number |
15790532
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
是松 聖悟 大分大学, 医学部, 助手 (60264347)
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Keywords | 脳炎・脳症 / インフルエンザ / サイトカイン / ケモカイン / 髄液 |
Research Abstract |
インフルエンザ脳炎・脳症の発症病態を免疫・アレルギー学的観点より検討し、病因究明と治療法開発一助とする。今回は、脳炎・脳症を含む痙攣性疾患の急性期の患児を対象に、髄液または血清中の炎症性サイトカイン(IL6、IL10)やケモカイン(MCP-1)を測定して、その経時的変化や重症度、合併疾患による異同を検討した。 インフルエンザ脳症(IE)、化膿性髄膜炎(PM)、無菌性髄膜炎(AM)、多発性硬化症(MS)の急性期には髄液中IL6(IE:258±135pg/ml、PM:781±516pg/ml、AM:103±121pg/ml、MS:315±250pg/ml)が上昇し、血清中(IE:48±15pg/ml、PM:67±16pg/ml、AM:35±21pg/ml、MS:56±20pg/ml)よりも高値であった。髄液中IL10は、ヘルペス脳炎(HE:464±138pg/ml)やPM(108±38pg/ml)で上昇していたが、IE、AM、MSでは検出感度以下であった。髄液中MCP-1はHEにおいて特異的に上昇(3758±248pg/ml)していた。各種治療にて、ほとんどの症例の上記サイトカインは検出限度以下に低下したが、一部、治療が遅れた症例や、後遺症としての脳障害を残した症例では、低下のみられない場合もあった。また、それまで正常発達で痙攣の既往もなかった児が、発熱を契機に痙攣重積と意識障害の遷延をみた症例のなかに、髄液中のサイトカインやケモカインの上昇がみられない症例もあり、これらは中枢炎症ではなく、痙攣による低酸素性脳症による痙攣重積、意識障害遷延と考えた。 今回の結果より、急性期の髄液中サイトカイン、ケモカインには、一部疾患特異性があり、発症早期の診断に有用と考えた。またステロイド投与も、髄液中サイトカイン、ケモカインによって適応を決めることが可能となることを示唆した。
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