2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳変性疾患モデルマウスにおけるシナプトソーム内ミトコンドリアと神経伝達物質輸送
Project/Area Number |
15790548
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
平田 孝治 久留米大学, 医学部, 研究員 (50360293)
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Keywords | マウス / シナプトソーム / ミトコンドリア / L-アルギニン / 呼吸鎖酵素活性 / Klotho / 老化 |
Research Abstract |
[研究の背景] ミトコンドリアは細胞にとって、エネルギー供給やイオンの恒常性維持に必要不可欠なものである。脳中枢神経系においては神経伝達物質輸送等の特徴的な機能はエネルギー依存性が高く、脳神経終末(シナプトソーム)は特に数多くのミトコンドリアが集積しており、その依存度は非常に高い。ミトコンドリア病にみられるような知能低下、精神異常、運動発達遅延や痙攣、さらにはミトコンドリア機能低下に関連する老化、これら症状の共通要因のひとつとして、ミトコンドリアに関連する脳神経伝達物質輸送制御の異常が深く関係しているものと考えられる。一方で、ミトコンドリア病のひとつであるMELASに対するアルギニンの脳卒中様発作の改善・予防効果が示され、新たな作用機作が期待されている。 [研究の目的](1)アルギニンのシナプトソームに及ぼす神経伝達物質輸送活性とミトコンドリア機能の相関関係を明らかにする。(2)脳変性疾患マウスとして老化(klotho)モデルマウスを用い、ミトコンドリア機能の相関関係から分子病態を解明する。 [結果](1)今回、野生型CD-1(ICR)マウスを用い、シナプトソームにおけるGlutamateとGABAの神経伝達物質輸送活性とミトコンドリア呼吸鎖活性(酸素消費を含む)を解析し、アルギニンが双方の活性に効果的に作用することが明らかとなった。(2)老化モデルマウスのカルシウム異常蓄積が原因となり、脳と腎の変性を確認し、これらのミトコンドリアにおいて機能が低下していることが今回明らかとなった。これらの成果は学会に公表した。[第4回ミトコンドリア研究会年会][アメリカ人類遺伝学会2004年国際学会][第77回生化学会大会 発表] (1)および(2)の内容は、近く論文公表の予定にある。今年度の結果を踏まえ、今後は(1)新規作用機作(経路)が期待されるアルギニンの効果を中心に、大脳シナプトソーム機能に及ぼす薬理的効果を解析し、(2)老化モデルマウスの脳組織形態学的解析から分子病態を解明していく。
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