2004 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓における組織幹細胞の分離と肝再生過程解明の研究
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15790708
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
長屋 昌樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (90329300)
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Keywords | 肝前駆細胞(HPC) / 温度感応性ハイドロゲル / ラット / 細胞培養 |
Research Abstract |
申請者は、温度感応性ハイドロゲル(TGP)をラット肝小欠損創部に充填する手法により肝前駆様細胞(HPC)誘導を可能とした。また通常、肝小欠損創では組織再生はおきず、同部は繊維組織と肉芽組織により置き換わるが、申請者のプロトコールを行った場合、誘導されたHPCにより欠損部の速やかな組織再生も同時に起こることが判明している。HPCは損傷部の組織修復過程早期より胆管様構造を呈して出現し、造血系細胞のマーカーc-kit、thy-1、胆管上皮細胞のマーカーCK19、肝細胞のマーカーアルブミンにそれぞれ陽性である。一方で組織再生を終える28日目にはalbumin単独陽性細胞となる。すなわちCK19は胆管様管腔構造から索状に形態変化するに伴い消失し、逆にalbuminは細胞の大型化、すなわち、胆管様細胞から肝細胞へと分化するに従い発現を強める。また増殖型のマーカーであるPCNA、Ki67陽性で、組織修復時、増殖能力が強く、HPCは組織再生の中心的役割を果たす事が判明した。本検討の結果、通常の成熟肝細胞による肝再生とは異なり、HPCが出現する際には成熟肝細胞による肝再生は進まないこと、HPCが経時的に形態変化を行い組織再生の役割を担っている事が判明した。申請者は本年度、この生体に誘導されたHPCの分離を行った。対照とした胆管結紮モデルラットから分離した胆管細胞は、14日目でほぼ死滅するのに対し、分離したHPCは、生体に誘導した細胞と同様にthy-1、albumin、CK19陽性であった。この後もalbumin、CK19陽性のまま増殖を続け14日目では約500個の細胞からなるコロニーを形成した。HPCは90日以上増殖を続けた。 我々が分離し得たHPCは、肝再組織化、移植、薬物代謝、分化のヒアラルキーの解析など新たな可能性が期待できる。
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