2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790717
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
谷内田 真一 香川大学, 医学部, 助手 (20359920)
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Keywords | 肝細胞癌 / 多段階発癌 / 細胞周期シグナル / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
香川大学医学部附属病院ならびに慶応義塾大学医学部附属病院にて手術をおこなった肝細胞癌症例(合計:約120病変)のプレパラートを,慶応義塾大学医学部病理学教室坂元亨宇数授の協力を得て,光学顕微鏡で再評価した.肝細胞癌の主結節とともに形態学的に"すその病変"といわれる主結節周囲の超高分化型肝細胞癌の成分や小結節性病変(早期肝細胞癌と腺腫様過形成)の拾い出しを行った. その結果,通常の肝癌結節(古典的肝細胞癌)とは別に,すその病変を15例,早期肝細胞癌を10例,腺腫様過形成を6例拾い出した.その他に,早期肝細胞癌内部により分化の劣る癌組織が境界明瞭,膨張性に存在する"結節内結節"病変を7例見出した. 通常の肝癌結節(古典的肝細胞癌)とこれらの病変に対して,当大学医学部腫瘍病理学教室(今井田克己教授)の協力を得て,自動免疫組織化学染色装置(ベンタナHX)で市販の抗体を用いて免疫組織化学染色を行った.まず細胞周期シグナルのうち,細胞の非増殖性と最も強い相関があるとされるp27について検討を行った.p27はこれまでの報告と同様に,通常の肝癌結節(古典的肝細胞癌)ではほとんどの症例で腫瘍細胞に核陽性反応を示した.また腫瘍細胞の胞体内にも陽性反応を示す症例も認められ,細胞内局在の変化と脱分化との関連が示唆された.さらに前癌病変とされる早期肝細胞癌や腺腫様過形成についても検討を行った結果,これらの病変でも核陽性反応を示す症例を多く認めた.つまり肝細胞癌の発癌初期の段階で,p27と関連する細胞周期シグナルの異常があることが,今回の研究で初めて認められた. さらに現在,p27を分解制御する,ユビキチンリガーゼであるSKP-2についても免疫組織化学染色で検討を行っている.肝細胞癌におけるSKP-2の免疫組織化学染色の検討は,古典的肝細胞癌を含めてこれまでに,ほとんど報告がない.SKP-2を検討することでp27蛋白の異常発現のメカニズムが明らかになる可能性がある. 今後はp27やSKP-2の核陽性反応を定量化し,臨床病理学的な因子との関連性を評価・検討する予定である.さらに前癌病変におけるp27の異常を遺伝子レベルでも評価を行う予定である.
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