2003 Fiscal Year Annual Research Report
非炎症性侵襲下における腸管壁防御機構破綻の機序:炎症性侵襲との比較
Project/Area Number |
15790832
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中村 教人 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90327601)
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Keywords | 低酸素侵襲 / 血管内皮細胞障害 / 白血球 / 好中球エラスターゼ / HM-GB-1 |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、非炎症性侵襲急性低酸素により惹起される腸管壁透過性亢進の機序には内毒素血症と同様に炎症性細胞活性化や血管内皮細胞障害が関与していることを明らかにすることにある。2年間にわたる本研究計画で初年度にあたる15年度は、内毒素血症による炎症性侵襲と急性低酸素による非炎症性侵襲モデルの確立と低酸素症モデルにおける炎症性細胞活性化の存在を検討した。腸管壁透過性亢進の評価としては既に確立している蛍光色素FITC標識デキストラン法を用い、亢進の程度がほぼ同じになるような低酸素ならびに内毒素の量を規定した。急性低酸素では吸入酸素濃度0.08、内毒素血症では(150μg/kg/hr)をそれぞれ3時間維持することより、ほぼ安定した血行動態と肝機能障害やLDH上昇をきたすことを確認した。一方、白血球数は内毒素侵襲群では血管内皮細胞への接着などにより低下するのに対し、低酸素侵襲群では変化しなかった。また分画は内毒素群では好中球減少、低酸素群ではリンパ球上昇を認めた。また低酸素侵襲群では白血球数に変化がないにもかかわらず、好中球エラスターゼ活性上昇と炎症性侵襲後期に放出されるサイトカインhigh morbidity group box-1 (HMGB-1)が増加していることを予備実験から捕らえた。そこで、現在は、好中球エラスターゼ阻害薬ならびにHMGB-1抗体投与が低酸素惹起性腸管壁透過性亢進を抑えるか検討している。次年度はこれらの基礎的結果を基に、低酸素侵襲性腸管壁透過性亢進の機序解明をさらに進める予定である。
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