2003 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の腹膜転移形成における細胞膜型アミノペプチダーゼの役割と遺伝子治療への応用
Project/Area Number |
15790885
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶山 広明 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00345886)
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Keywords | 卵巣癌 / DPPIV / 形態変化 / 浸潤 / NEP / エンドセリン-1 |
Research Abstract |
卵巣癌細胞におけるDipeptidyl Peptidase IV(以下DPPIV)による浸潤能低下の細胞内メカニズムの解明とNeutral endopeptidase 24.11(以下NEP)の卵巣癌における機能解析。 1)卵巣癌細胞SKOV3の細胞形態がDPPIVの遺伝子導入によって線維芽細胞様から上皮細胞様、敷石状に変化するというエビデンスからE型カドヘリンなどの細胞内接着分子の発現にDPPIVが関与していることが想定された。しかるに、まず種々の卵巣癌細胞株におけるDPPIVとE型カドヘリン、および【○!R】カテニンの発現レベルを調べたところ、正の相関にあった。また、SKOV3細胞にDPPIVを遺伝子導入するとE型カドヘリン、および【○!R】カテニンの発現はベクターのみの導入株に比較して有意に低下していた。また、DPPIVによって細胞浸潤能が低下するというエビデンスから、種々のマトリックスメタロプロテアーゼ(以下、MMPs)やTissue inhibitors of MMPs (TIMPs)の発現にDPPIVの発現が影響を及ぼしていると考えられた。よって、同様にDPPIV過剰発現SKOV3細胞においてTIMP-1,2の発現を調べるとベクターのみの導入株に比較して著明に増加していた。また、DPPIVの導入によってMMP-2の活性と発現は減少していた。これらの結果によって、DPPIVはE型カドヘリンやMMP-2などの細胞内分子の発現に影響を及ぼし、卵巣癌の腹膜進展に抑制的に機能している可能性が示唆された。 次いでSKOV3細胞の野生株、ベクターのみの導入株、及びDPPIV導入株における細胞内シグナル伝達系の変化を調べた。上記細胞をserum starvation後にserum刺激を加えると、MAP kinaseの一つであるextracellular regulated kinase (ERK)のリン酸化がDPPIV導入株において減弱していた。よってERKはDPPIVによって抑制的支配を受けるシグナルの一つであり、浸潤能が低下する一種のメカニズムであるといえる。 2)NEPに関してはまず、卵巣癌の各種組織型において免疫染色を行い、その発現レベルと局在を確認した。NEPは卵巣癌の癌細胞部分に局在するもの、間質に存在するものに大別されたが、後者の発現がメインであった。DPPIVと同様にNEP低発現であるSKOV3細胞に遺伝子導入を行い、野生株、ベクターのみの導入株、およびNEP導入株における増殖能(MTT Assay)、および浸潤能(Matrigel Invasion Assay)にて調べた。NEP導入株においてはベクターのみの導入株に比較して増殖能、浸潤能、及びexogenousなエンドセリン-1の分泌は有意に抑制された。エンドセリンー1は卵巣癌細胞の増殖や浸潤を亢進するという報告がある。このようにNEPなどの細胞表面ペプチダーゼは、酵素活性を介した基質ペプチドの分解を通して、癌の増殖や進展などに抑制的に関与していると考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hiroaki Kajiyama, Fumitaka Kikkawa et al.: "Dipeptidyl peptidase IV overexpression induced up-regulation of E-cadherin and tissue inhibitors of matrix metalloproteinase, resulting in decreased invasive potential in ovarian carcinoma cell"Cancer Res.. 105(6). 779-783 (2003)