2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15791056
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉澤 達也 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (40313530)
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Keywords | 歯根膜 / 骨芽細胞 / 石灰化 / 靭帯 / 後縦靭帯骨化症 / Runx2 / 細胞分化 / Msx2 |
Research Abstract |
本研究では、靭帯繊維芽細胞の特性と分化制御機構の一端を明らかにする目的で、以下の検討をした。 1)歯根膜細胞株L2から骨芽細胞への分化抑制機構の解析 L2細胞では骨芽細胞分化決定因子Runx2/Osf2が発現しており硬組織形成系細胞への分化能を有するが、通常は分化を抑制する機構が働いていることが示唆された。さらに、L2細胞には、Runx2の活性を積極的に抑制する機構が存在すること、この機構にホメオボックス転写因子Msx2が関与することを示した。Msx2は若い骨芽細胞の増殖を促進し、石灰化を抑制することが報告されている。そこで、Runx2に対するMsx2の効果を検討した結果、Msx2はRunx2と複合体を形成し、その転写活性を抑制することが明らかとなった。更に、L2においてMsx2の発現を恒常的に抑えたところ、硬組織形成系細胞への分化が顕著に誘導された。また、脂肪細胞への分化も認められた。更に、後縦靭帯骨化症(OPLL)の患者3例の正常靱帯部と骨化部のMsx2発現を比較したところ、骨化部では顕著にMsx2の発現が低下していることを明らかにした。以上から、Msx2は、Runx2の転写活性を抑えることにより、靱帯や腱の細胞の硬組織形成系細胞への分化を抑制する重要な因子として機能していると考えられた。 2)靭帯繊維芽細胞における石灰化抑制機構の解析 機械的刺激により骨芽細胞の石灰化は促進されるが、靭帯繊維芽細胞においては、常時機械的刺激にさらされているにもかかわらず石灰化せず、独自の性質を保持している。そこで本研究では、歯根膜繊維芽細胞株L2に機械的伸展刺激を加える系を用いて、靭帯繊維芽細胞が機械的刺激に反応するが石灰化は促進されない機構の解析を行った。その結果、骨芽細胞ではよく知られている、機械的刺激に応答するIntegrin-FAK-MAPK-Runx2シグナル伝達経路のうち、L2細胞内ではFAKの活性化(リン酸化)が阻害されている事を世界で初めて明らかにした。骨芽細胞での機械的刺激応答に重要なIntegrin alpha2/5,beta1は、L2細胞にも発現している事を確認しており、この事はL2細胞にはFAKの積極的な抑制機構が存在する事を示唆している。今後は、本研究の成果を踏まえ、この抑制機構の鍵になるシグナル伝達機構の解明を予定している。
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Research Products
(1 results)