2004 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子Ets-1による歯髄の創傷治癒のメカニズムの解明
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15791104
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
達山 祥子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (70347095)
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Keywords | ヒト歯髄細胞 / 転写因子 / Ets-1 / VEGF / MAP kinase / シグナル伝達 |
Research Abstract |
創傷治癒において、まず重要なことは血管新生が起こることである。歯髄が細菌感染等でダメージを受け、炎症が起きた場合でもその再生には新たな血管新生が必要と考える。転写因子Ets-1は、血管新生を促すタンパクの遺伝子調節を行っている。つまり、新しい血管ができる空間を作るためのプロテアーゼの発現の促進や、血管内皮細胞の増殖・浸潤といったことを調節している。Ets-1のシグナル伝達の解析が炎症からの回復に有効な手段の解明へとつながると考えられる。 また、血管内皮増殖因子(VEGF)も、血管新生を促す重要な因子であり、炎症に深く関わっていることが知られている。我々は以前に、歯髄炎においてVEGFの産生が増加していること、細菌の内毒素であるLPSによりヒト歯髄細胞のVEGFの産生が増強されることから、VEGFが歯髄炎においてもなんらかの役割をはたしている可能性を明らかにした。さらに、ヒト歯髄細胞においてVEGFはEts-1の活性化を誘導すること、またその活性化はMAP kinaseカスケードのうち細胞の増殖や分化に関わるERKを介して引き起こされることがわかった。つまり、歯髄炎において、Ets-1は血管新生のみならず歯髄細胞の増殖・分化を促し、組織の再生・創傷治癒に関わっている可能性が示唆された。数々の転写因子は、それ単独ではなく他の遺伝子調節因子と共同してシグナルを伝える。免疫沈降法を用いたEts-1と結合する他の調節因子の解析、Ets-1の発現ベクターのヒト歯髄細胞への遺伝子導入、siRNAによるEts-1の特異的な発現抑制実験等を行い、さらに詳細なシグナルの伝達を明確にし、Ets-1の歯髄における役割を検討していく予定である。
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