2004 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆高齢者の摂食能力を強める環境デザインの探求と臨床実践における有用性の検討
Project/Area Number |
15791358
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
山田 律子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教授 (70285542)
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Keywords | 痴呆(認知症) / 高齢者 / 摂食能力 / 環境デザイン |
Research Abstract |
平成16年度の研究目的は,痴呆高齢者の摂食能力を強める環境デザインを探求するため,1)看護実践において痴呆高齢者の摂食能力を強めた成功事例の分析,2)痴呆ケアにおける看護師エクスパートパネル,3)文献検討を通して,環境デザインの構成要素を抽出することである. 成功事例の分析では,MDS (Minimum Data Set)に基づく食事自立度が過去2年間で改善した痴呆高齢者23人(平均年齢85.8±8.1歳,重症痴呆73.9%)を対象とした.食事自立度0%から50%未満の者は重症痴呆かつ寝たきり状態にあり,好みの食物や食器の工夫などにより食のきっかけを探り,食の楽しみを重視した看護が提供された結果,自立度は50%前後まで回復していた.食事自立度50%以上75%未満の者では,情動が不安定で食事に拒否的な行動を示す者が72.7%を占め,対象にとって安心できる場の提供や食べたい時に食べることができるよう環境を整えていくことが有効であった.食事自立度が75%以上の者では,社会的交流や活動の促進,セルフケア能力の向上など生活の営みを整える援助が実施された結果,ほぼ100%まで回復していた. 看護師エクスパートパネルの結果,痴呆高齢者の摂食能力を強める環境デザインに関して86のエピソードが話題にあがった。これらの結果をカテゴリー化した上で,上記の成功事例の分析と文献検討をふまえ再分析した結果,痴呆高齢者の摂食能力を強める環境デザインの構成要素として,「環境にある刺激の質の検討と調整「見当識を補完する環境支援」「快適さと安全をもたらす環境支援」「機能的な能力を高める環境支援」「自己選択・主体性を引き出す環境支援」「過去と現在をつなぐ環境支援」「快の感情を高める環境支援」「自己尊厳を守るための環境支援「社会的交流を促進する場づくり」「食事に専心できる内部環境の整え」の10要素が抽出された.
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