2015 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子を刺激する磁性ナノ粒子の創製と血管形成療法への応用
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15F15030
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (50356672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
QUAZI TANMINUL HAQUE SHUBHRA 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / ナノコンポジット / DNA / 遺伝子導入 / 過飽和溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞への遺伝子導入機能と磁性を併せ示すDNA-マグネタイト-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子を創製することを目的とする。研究代表者らはこれまでに、認可済みの医療用輸液を原料とする、安全性に優れたDNA-リン酸カルシウムナノコンポジット層の合成技術を開発し、surface-mediated gene deliveryに応用してきた。本研究では、この合成技術を利用してDNA-マグネタイト-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子を合成し、脳虚血性疾患治療を志向したparticle-mediated gene deliveryに適用することを目指している。 本年度はまず、マグネタイトを含まないDNA-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子の合成条件とparticle-mediated gene deliveryへの適用について、基礎的検討を行った。具体的には、研究代表者らの合成技術を用い、反応液であるリン酸カルシウム過飽和溶液中のカルシウム・リン酸イオン濃度、合成温度、ならびに反応時間を系統的に変化させ、生成粒子の濃度とサイズ分布を動的光散乱法などにより評価するとともに、動物細胞への遺伝子導入機能をルシフェラーセアッセイにより調べた。これにより、ナノコンポジット粒子の遺伝子導入機能を向上させるための条件を明らかにした。また、最適化された条件で得られたナノコンポジット粒子が、市販のリン酸カルシウム系遺伝子導入剤よりも高い遺伝子導入機能を発揮することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、細胞への遺伝子導入機能と磁性を併せ示すDNA-マグネタイト-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子の創製を最終的な目標としているが、本年度はより単純なDNA-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子を対象に、合成条件の詳細な検討を行った。その結果、ナノコンポジット粒子の遺伝子導入機能向上のための基礎的指針を明らかにするとともに、市販のリン酸カルシウム系遺伝子導入剤を上回る導入効率を達成した。得られた成果について国際ミーティング(JSPS 8th HOPE Meeting)において発表を行い、論文執筆に進んでいる。 以上の状況から、現在までのところ本研究はおおむね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究成果を論文としてまとめると共に、DNA-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子に磁性を付与するための検討を進める。具体的には、H27年度の研究において見出された粒子合成指針を参考に、マグネタイトナノ粒子およびDNA(ルシフェラーゼのcDNAを含むプラスミド)を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液を用いて、DNA-マグネタイト-リン酸カルシウムナノコンポジット粒子を合成する。この際、過飽和溶液に添加するマグネタイトナノ粒子の表面性状、濃度などの条件を変化させる。得られたナノコンポジット粒子の組成、構造、ならびに磁気特性を、動的光散乱法、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、X線回折法、エネルギー分散型X線分析、磁石、MRIなどにより評価する。さらに、得られたナノコンポジット粒子を動物細胞に作用させ、細胞への遺伝子導入機能をルシフェラーゼアッセイにより評価する。以上のin vitro実験により、遺伝子導入機能と磁性(MRI造影機能)を併せ示すナノコンポジット粒子を作製するための基礎的条件を明らかにする。H28年度前半までに十分な遺伝子導入機能とMRI造影機能が達成された場合には、予備的な動物実験を実施することにより、血管形成療法への応用可能性を調べる。H28年度前半までに十分な機能が達成されない場合には、粒子合成条件のさらなる改良を進める。
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Research Products
(4 results)