2015 Fiscal Year Annual Research Report
アジア産カスミカメムシ科(カメムシ目)の系統分類と有用生物資源種の探索
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15F15085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広渡 俊哉 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20208896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DUWAL RAM 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-07-29 – 2017-03-31
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Keywords | カスミカメムシ科 / 系統分類 / 多様性 / 有用生物資源 / 生物的防除 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、系統分類学的研究の材料を追加するために、野外調査ならびに博物館等に所蔵されている標本調査が中心だったが、以下のように多くの新知見を含むサンプルを収集することができた。 まず、広渡(研究代表者)とRam Keshari Duwal(外国人特別研究員)が、2015年10月に沖縄県国頭村与那覇岳周辺において、さらに、2016年3月にラオス南部で夜間の灯火採集を含む調査を実施した。調査によりチビカスミカメムシ亜科Phylinaeを中心として多くの未記載種を含むサンプルを得ることができた。また、Duwalが、2016年2月につくば市の農業環境技術研究所ならびに国立科学博物館を訪問し、標本調査を実施した。2016年3月には長崎市に在住の共同研究者であり、外国人特別研究員の推薦者である安永智秀博士(JICA国際協力機構シニア海外ボランティア、アメリカ自然史博物館研究協力員)が保管している東南アジア産の標本調査を行った。さらに、2016年4月にカナダのOttawa Research and Development Centreにおいてアジア産ならびに東南アジア産のカスミカメムシ科昆虫の標本調査を実施した。その結果、インド、ネパール、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア産チビカスミカメムシ亜科Phylinaeの多くの未記載種を見い出すことができた。特に、アリに擬態しアブラムシ類やアザミウマ類などを捕食することから害虫の天敵(有用生物資源)として利用できる可能性があるPilophorus属の未知種を多数発見できたことが特筆できる。研究成果については、2015年12月に広渡と Duwalが熊本県立高森高校(学振主催:サイエンスダイアローグ)で紹介するとともに、2016年9月にアメリカで開催される国際昆虫学会議(International Congress of Entomology)で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、野外調査と博物館等に所蔵されている標本調査によってサンプルを収集し、それに基づいて解剖学的、あるいは分子生物学的手法により、カスミカメムシ科昆虫の系統分類学的研究を進めている。 まず、野外調査については、ヒマラヤ地域と生物地理学的に関連のある日本の琉球列島(沖縄島)とラオスで調査を実施したこと、標本調査については、九州大学の他、農業環境技術研究所、国立科学博物館等で調査を行ったのに加えて、2016年4月に当初計画していなかったカナダのOttawa Research and Development Centreにおいてアジア産昆虫の標本調査を行い、カスミカメムシ科昆虫の標本調査を実施し、東南アジア産の多くのチビカスミカメムシ亜科Phylinaeの未記載種を見い出すことができたことから、研究はおおむね順調に進んでいると言える。また、集積した標本の整理と解剖等の研究も順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年5-9月に、日本国内および東南アジア(ネパールなど)における野外調査を実施するとともに標本の解剖、交尾器等の有用形態形質を抽出し、日本列島及び周辺アジア諸国におけるカスミカメムシ類の生息種相の全貌解明を目指す。これと並行して重要害虫と有用生物資源種の絞り込みを行い、同定のためのバーコード領域を中心とした遺伝子解析を実施する。2016年9月に、アメリカオ-ランドで開催される国際昆虫学会に参加し、害虫の天敵(有用生物資源)として利用できる可能性があるPilophorus属に関する研究成果を発表する。 2016年10-12月に、異なる遺伝子領域、ならびに形態と分子に基づいて、ヒマラヤ~東アジア+東南アジアに分布する特定のグループの系統解析(最尤法、最大節約法、ベイズ法)を行う。さらに、2017年1-4月に、同定困難な農業害虫種及び有効天敵種を形態・分子データ・生態的特性から詳細にスクリーニングし、確定的な同定・防除・利用技術を開発するとともに、研究成果に関する論文を作成する。 なお、何らかの事情で東南アジアでの調査が実施できない場合でも、現在集積したサンプルにもとづいて研究を進めることは可能である。
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Research Products
(4 results)