2015 Fiscal Year Annual Research Report
糖質酵素に見出された新しい機能を発揮させる構造因子の分子機構とその応用
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15F15090
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 淳夫 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90186312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MANEESAN JANJIRA 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 糖質酵素 / 高基質濃度 / 伸長作用 / 阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、我々が見出した2つの糖質酵素 [花バチのスクラーゼ(SUCase)と多糖合成酵素(PSase)] が示す新しい現象の分子解析と応用である。 SUCaseの優れた特徴は「基質阻害・生成物阻害が極めて低く」、高基質濃度で活発に反応できる点にある。この低阻害に関わる構造因子を決定し、機能を解明する。高基質濃度で高活性な酵素は産業上で重要である。 PSaseは多糖を糖転移と糖鎖伸長で合成するが、我々は「両反応が別個の部位で生じる」と推測した。その理由はC末端を除去した変異酵素の多糖合成能が低下したからである。現在、支持されている多糖合成酵素の機構は「糖転移と糖鎖伸長が活性部位で触媒」である。当該領域の糖鎖伸長に関わる構造因子を決定し、一般説を精査する。また、本構造因子を知ることで、サイズに依存した新規な糖質の生産が可能になると推察され、有用機能を有するPSaseを作製する。 1. SUCaseの低阻害機能を担うと予想されたLeuとGlnを置換した。両残基へ変異は活性を増加させたが、導入アミノ酸の種類に依存した(高活性体は、Leuの塩基性残基や小サイズ残基への置換およびGlnのアミド残基への置換で取得)。高基質濃度(高ショ糖濃度)で反応を行うと、3変異酵素で阻害が低下する現象が観察された。SUCaseの野生型酵素を大量に精製できたので結晶化を行っている。 2. PSaseの糖鎖伸長を支配する構造因子を当該領域の部分除去変異実験で検討した(除去部分を細かく設定)。各変異体が示す転移活性を、測定がより正確な2糖基質を用いて求めると、本活性はほぼ同じであった。生成物のサイズ分析で伸長反応を調べると、短鎖型と長鎖型のオリゴ糖生成に関与する領域が初めて見出された。なお、立体構造解析に用いる酵素結晶の取得条件は検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に掲げた研究が順調に進められた。特に、SUCaseにおいて標的としたアミノ酸は触媒アミノ酸の近傍に存在している。そのような重要部位に対する変異導入は機能低下を招くことが一般的であるが、親酵素より高い活性を示す予想外の好成果が得られた。PSase研究に関する当初予想では、短鎖オリゴ糖生成に対する影響が少ないと考えていたが、本年度の結果から短鎖型生産にも効果があることが判明し、興味深い知見が見出された。これらは当初計画を上回る優れた成果と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に変更はない。すなわち、初年度において立案した計画に従って研究を進め、2つの酵素が示すユニークな機能の分子機構を解析する。
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Research Products
(1 results)