2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15302
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桂島 宣弘 立命館大学, 文学部, 教授 (10161093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHIM HEECHAN 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 東アジア史学史 / トランスナショナル / 植民地主義 / 一国史 / 実証主義 / 新史学 / 須永元 / 東洋史研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に引き続き、「東アジア史学思想史研究会」を中心に研究活動を行った。研究活動の範囲をさらに拡張し、日中韓台の研究者を招いて8回の研究会を行った(4月16日、5月21日、6月27日、7月16日、9月13日、10月7日、11月4日、12月9日)。研究分担者は、前年度同様、これらの研究会を企画・運用すると同時に、自らも研究成果を日韓で公表している(研究発表欄を参照)。とりわけ、10月7日の研究会では韓国の中国史研究者を招待し、「新史学」と呼ばれる中国の近代歴史学が帝国日本の東洋史研究に影響されていた点、そしてその一国史的な構図について議論を交わした。また11月4日の研究会では、19世紀末~20世紀初において朝鮮の知識人たちと緊密に交流していた須永元を取りあげ、知識人たちの連帯とその経過を「東アジア史」の観点から考える場を設けた。既存の一国史や実証主義的な観点を乗り越えつつ、「東アジア史学史」の枠組みから植民地主義と歴史学の問題を問う切っ掛けとなった。 とくに、東アジアにおける近代歴史学の成立期に交わされた日韓の知識人たちの交流、および中国の近代歴史学や台湾の歴史叙述などに注目することで、歴史学をめぐる諸制度はもちろん、その叙述内容にも当該期の自他認識が深く刻印されていることを確認したが、この点は東アジアの史学史を捉えなおそうとする本研究の課題を大きく進展させたといえる。 平成29年度には今までの研究成果を集大成するシンポジウムを開き(2017年12月~2018年1月を予定)、日中韓台の研究者たちとともに「近代日本の植民地主義と「東アジア史学史」」を中心テーマとする単行本を刊行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
韓国・漢陽大学と共同に行った平成27年度の研究成果を韓国で編著として公刊した(研究発表欄を参照)。 平成27年度は日韓の歴史学者を中心に研究活動を行ってきたが、さらに範囲を広げ、中国や台湾をフィールドに活動している研究者たちを招いて議論を交わした。さらに、須永元文庫をはじめ、多様な地域の研究者および学芸員の方々と交流を行うことができたことは、研究を大いに発展させる契機になったと考えている。時期的にも19世紀末から現代史までを扱うようになり、近代歴史学を東アジアという時空間のなかで捉える方向に研究が進んでいる。 そして「東アジア史学思想史研究会」をすでに18回も行い、発表や参加を希望する人が増えるなど、周りからの関心も高くなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、立命館大学を拠点に、近代歴史学を「東アジア史学史」の観点から捉えなおす作業に邁進する。今までの研究成果をまとめて論文執筆を実施するとともに、編著などの出版にも努める。また、研究分担者を中心に、須永元文庫(佐野市)や台湾大学などでの史料調査を計画している。共同研究を行っている韓国・漢陽大学のチームとも緊密に連絡し合い、研究成果を日韓で同時に発表する。また中国や台湾における研究者たちとの提携を強化し、意見交換や資料の把握に尽力する。 とりわけ本研究の拠点となる「東アジア史学思想史研究会」を定期的に開催し、年度末には今までの成果を集大成するシンポジウムを開く。その成果をまずは日韓で公表する。
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Research Products
(9 results)