2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15393
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河岸 洋和 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (70183283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WU JING 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 子実体形成物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの生物種は、特有のホルモンを有している。しかし、高等菌類であるキノコにおけるホルモンは全く明らかにされていない。本研究では、菌糸から子実体を発生させる子実体形成物質(発茸ホルモン)の発見を目指し、以下のような実験を行った。 1.我々は、キノコにもステロイドホルモンが存在するという仮説をもっている。その候補としてサケツバタケからstrophasterol類や茶樹茸から単離されchaxine類を考えた。昨年度の研究結果で、キノコが普遍的にstrophasterol類とchaxine類を内生している可能性を示唆された。今年度では、strophasterol Aはエノキタケ、コムラサキシメジとウシグソヒトヨタケに対して、菌糸体の成長阻害活性が確認された。Chaxine Bはマツタケに対して、菌糸体の成長促進活性が確認された。 2.当研究室では、フェアリーリングを引き起こす植物成長調節物質2-azahypoxanthine (AHX)、2-aza-8-oxohypoxanthine (AOH) およびimidazole-4-carboxamide (ICA) を発見した (以下、fairy chemicals, FCsと称する)。FCsが新しい植物ホルモンであることが示唆されている。昨年度の研究結果で、FCsは子実体形成活性を見出し、キノコに普遍的に存在する可能性を示唆された。今年度では、FCsはマツタケに対して、菌糸体の成長強い促進活性が見られた。そして、FCsはマツタケ液体培地に添加し、培養濾液からFCsの二次代謝産物の単離・精製、構造決定を試みた。 3.様々な菌類が子実体を発生させる直前に液体を分泌する。我々は、この液体が子実体形成に深く関与していると考え、 fruiting liquid (FL) と命名した。ヤマブシタケFL (Y-FL)から得られた化合物(FLY-1と仮称)がウシグソヒトヨタケの子実体を誘導した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
候補化合物、strophasterol Aとchaxine Bが、予想通りキノコの成長に関与していることを確認している。FLからもウシグソヒトヨタケの子実体を誘導する物質を発見した。このように研究はほぼ順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、前述した目的を達成するために、前年度に引き続き,以下の検討を行う。 1. Strophasterol類とchaxine類のキノコにおける普遍的な内生を証明するため、なるべく多数のキノコを入手し、エタノールで抽出する。抽出液を減圧濃縮後、ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、水可溶部に分ける。ヘキサン可溶部と酢酸エチル可溶部をLC-MS/MSに供する。目的物質が検出できない場合は、これら画分をHPLCで分画し、その画分をLC-MS/MSに供する。また、LC-MS/MSの結果によっては数種のキノコからstrophasterol類の類縁体が得られる可能性も有り、各種クロマトグラフィーを用いて、新規のstrophasterol類化合物を単離精製し、NMR等の各種機器分析によって構造を決定する。 2. フェアリー化合物のキノコにおける普遍的な内生を証明するため、多数のキノコをエタノールで抽出する。抽出液を減圧濃縮後、ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、水可溶部に分ける。エタノール可溶部と水可溶部をLC-MS/MSに供する。また、フェアリー化合物の代謝産物や類縁体が得られる可能性も有り、その場合は各種機器分析によって構造を決定する。 3.キノコ発生実験の結果を指標に、ブナシメジ、ヤマブシタケ、エリンギおよびクリタケのFL FLから各種クロマトグラフィーを用いて、化合物を単離精製し、NMR等の各種機器分析により、構造を決定する。また、各種キノコのFL中に共通に存在する成分であるか否かを確認する。 4. Strophasterol類、chaxine類、フェアリー化合物、FL類化合物を対象に、ヤマブシタケ、ブナシメジ、エノキタケ、マツタケおよびサナギタケなど菌株を用いて、恒温恒湿のキノコ栽培室で、子実体形成に対するバイオアッセイをシャーレやポットを用いて行う。
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Research Products
(1 results)