2016 Fiscal Year Annual Research Report
農地土壌へのバイオ炭施用による一酸化二窒素の発生経路および削減メカニズムの解明
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15F15403
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
秋山 博子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 気候変動対応研究領域, ユニット長 (00354001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CAI YANJIANG 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 気候変動対応研究領域, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 一酸化二窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
Biochar(バイオ炭)は生物資源を材料とした炭化物である。農耕地への堆肥や作物残さ等の有機物の土壌への施用は、土壌炭素を蓄積させることにより大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を低減できる可能性があると考えられており、炭素隔離技術として注目されている。一方、農耕地土壌における化学肥料および有機肥料の施用は、温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)の最大の人為的発生源であると推定されており、その削減技術の開発は重要な課題となっている。バイオ炭は土壌炭素蓄積のみでなく、作物の収量増加およびN2Oの発生削減技術としても有効である可能性が指摘されているが、研究例は少ない。 28年度は、日本の農耕地土壌においてバイオ炭によるN2O発生抑制効果およびそのメカニズムを解明するために、バイオ炭4種(もみ殻燻炭、竹炭、木炭2種)を用いて土壌インキュベーション実験を行ったが、有意なN2O削減効果がみられなかった。このことから、バイオ炭による温暖化緩和効果は主に土壌炭素蓄積によるものと考えられた。また、放牧草地から発生するN2Oに関するレビューを行い、国際誌に論文を発表した。このレビューにより、放牧草地の家畜糞尿が重要なN2O発生源であることを明らかにし、またN2O排出係数を算定した。さらに、放牧草地におけるバイオ炭や硝化抑制剤等によるN2Oの発生削減に関するレビューを行い、国際誌に論文を投稿した。これにより、硝化抑制剤は放牧草地の家畜糞尿においてもN2O削減が可能であること、および家畜糞尿から発生するN2Oのバイオ炭施用によるN2O削減効果についての研究例は十分でなく、さらなる研究が必要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定したインキュベーション実験を行った。またN2Oに関するレビュー論文を国際誌に発表した。さらに1報の論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の試験においては有意なN2O削減効果がみられなかったが、バイオ炭がN2O削減に効果がみられたという海外の報告例が多くある。このようにバイオ炭によるN2O削減効果が条件によって異なる理由およびバイオ炭にN2O削減するメカニズムは明らかでなく、これまでに多くの仮説がだされている。これらの仮説には、バイオ炭が土壌物理性に及ぼす影響、土壌水分に及ぼす影響、無機態窒素の吸着等の化学性に及ぼす影響、微生物に及ぼす影響などがある。我々は、バイオ炭が微生物による脱窒に影響を及ぼすために、脱窒の多い条件においてN2O発生削減効果をもつと考え、バイオ炭がN2O発生に関与する微生物(硝化・脱窒)に及ぼす影響を明らかにするため、以下の実験を行う。 (1)黒ボク土を使用し、バイオ炭4種(もみ殻燻炭、竹炭、木炭2種)を施用してインキュベーション実験を行う。脱窒を促進するために土壌水分を高めた条件と、通常の畑条件の2段階の土壌水分条件とする。同時に15Nトレーサー法を用いて微生物によるN2Oの発生経路(硝化、脱窒)の割合を明らかにする。 (2)さらに、土壌から発生するN2Oに関するレビュー論文を共同執筆する。
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Research Products
(1 results)