2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15F15727
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 毅 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70201506)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HU HAOYU 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 代数学 / 数論幾何 / 特性サイクル / 導手 / 全次元因子 / 半連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高次元の代数多様体上のエタール層について、その分岐の不変量の半連続性を研究した。1980年代、DeligneとLaumonにより代数曲線上のエタール層の分岐のもっとも基本的な不変量であるSwan導手について、その族に関する半連続性という重要な結果が証明された。最近になって斎藤毅により、高次元のスムーズな多様体上のエタール層Fに対し、その因子にそった分岐の不変量として全次元因子DTFが、さらに精密な不変量として特性サイクルCCFが余接束上のサイクルとしてそれぞれ定義されている。 そこでこれらの新しい不変量に対しても、古典的なSwan導手と同様な半連続性がなりたつか研究した。全次元因子については、期待されたように半連続性がなりたつことを証明した。高次元多様体のスムーズな族上の局所定数層でスムーズな因子の族で分岐するものに対し、その因子に台をもつ正カルティエ因子で、底空間の稠密な開集合では全次元因子と一致し、いたるところ不等号が成立するものの存在を証明した。証明は曲線の族への制限についての古典的な結果への帰着によるものである。この結果は論文としてまとめ、プレプリントサーバーに投稿した。arXiv:1511.04866 さらに、特性サイクルについても研究を進めた。この場合には、スムーズな多様体の族の上の構成可能層が対象となる。これについては、底空間の稠密な開集合上で、特性サイクルが平坦な族となるものが存在することを証明した。その一方、特性サイクルに対しては古典的な場合のような半連続性は成り立たない例があることも発見した。これは意外な現象であり、高次元での層のさらに深い理解が必要なことを示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマを分岐の不変量の半連続性と明確に設定することで、研究が着実に進んだ。全次元因子について半連続性が証明できたことは、優れた結果である。スムーズという条件を正規という条件にゆるめた場合の解明は今後の課題である。特性サイクルについても稠密開集合での連続性の証明は良い結果である。また特性サイクルについて一般には半連続性が成り立たないという新しい現象の発見は今後の展開を予感させるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
スムーズな多様体については代数曲線の族への制限の方法の有効性が確立されたので、この方法の正規な多様体への拡張を探る。特性サイクルの半連続性については、一般には不成立であることがわかったので、まず成立のための十分条件をみつけ、引き続き一般には不成立となる現象の理由を解明をめざす。分岐の不変量としては、全次元因子や特性サイクルという幾何的なものより精密なものとして、イプシロン因子とよばれる整数論的なものがある。高次元の多様体上の層のイプシロン因子についても、簡単な場合から理解を進めて行く。
|