2015 Fiscal Year Annual Research Report
有機リン蛍光色素の創製とバイオイメージングへの応用
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15F15761
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 教授 (60260618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GRZYBOWSKI MAREK 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 有機リン蛍光色素 / 赤色発光 / 近赤外発光 / 蛍光イメージング / フルオレセイン誘導体 / ローダミン誘導体 / 高耐光性 / pH依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンを鍵元素として用いた新規蛍光プローブとして,キサンテン環の10位の酸素原子をホスホリル基(P(R)=O)に置換した化合物を種々合成し,それぞれの光物性およびpH応答性について検討した。まず,フルオレセイン誘導体であるホスファフルオレセイン(POF)について合成検討を行い,合成前駆体であるキサントン骨格を高い収率で得ることに成功した。これによってグラムスケールで化合物を合成することが可能になり,様々な誘導化が可能になった。得られたPOFはpH応答性を示し, pHが 3から9に上がるにつれて吸収極大波長が488 nmから627 nmに大きく長波長シフトすることがわかった。また,POFをいずれの波長で励起しても633 nmを蛍光極大とする赤色蛍光を示した。そこでこの特性を利用し,細胞内pHのレシオイメージングを行った。細胞内pHをそれぞれ4.5と6.5に調整した細胞を用い,POFをロードしたところ,等吸収点である532 nmで励起した場合は両者の蛍光強度に大きな差が認められなかったのに対し,627 nmで励起した場合は,pH 6.5の細胞からのみ強いシグナルが観測された。すなわち,POFは赤色から近赤外蛍光を示す優れた蛍光色素であり,蛍光イメージングプローブとして非常に有用な骨格であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光色素骨格に対してリン原子を導入することにより特徴的な電子構造をもたせ,分子サイズを大きく変えることなく光物性に大きな変化を与えることができる。本研究は,種々の有機リン蛍光色素を創製し,これをバイオイメージングへ展開していくことを目的としている。昨年度は,キサンテン環の酸素原子をホスホリル基に置換した蛍光分子の効率的な合成法を確立することに成功し,様々な含リン蛍光色素を得ることができた。また,詳細な光物性の検討から蛍光プローブとしての有用性を評価し,生細胞を用いた蛍光イメージングも達成している。よって本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,有機リン蛍光色素の合成を進める。確立した合計経路を発展させ,種々の置換基を導入した誘導体をシリーズで合成し,それらの構造-物性相関について精査する。吸光度,量子収率,蛍光寿命測定を体系的に実施することにより置換基やリン原子の効果を明らかにする。これらの検討に加えて,各蛍光色素の光安定性を評価し,高耐光性蛍光色素の開発に取り組んでいく。一方,得られた蛍光色素群の中で優れた骨格を選出し,蛍光イメージングへと展開していく。蛍光色素に対して抗体修飾あるいはオルガネラ選択性を獲得するための化合物の導入を施し,蛍光ラベル化剤としての評価を行う。ここではマルチカラーイメージングも視野に入れる。また,ケージド化合物を導入することにより超解像顕微鏡イメージングの一種であるSTORMへの展開も図る。さらに,クラウンエーテル基などの金属イオン結合部位を導入することにより,様々な金属イオンプローブを開発し,長波長蛍光を利用して脳深部の金属イオンダイナミクスの可視化を目指す。
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Research Products
(1 results)