2015 Fiscal Year Annual Research Report
リー球面幾何学内のワイエルストラス型表現公式の研究
Project/Area Number |
15F15775
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
Rossman W.F 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50284485)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PEMBER MASON 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
|
Keywords | リー球面幾何学 / 曲面理論 / 変換理論 / 特異点 / 可積分系 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ラスマン、ペンバー、佐治氏、寺本氏との共同研究で、「正則曲面のリー球面変換」の研究を行った。一般に、正則曲面のリー球面変換は正則曲面にならず、特異点が現れる。我々の研究は、主曲率球面の挙動に注目することで、それらの特異点の型判定を行い、どういう状況で特異点が現れるかを明らかにした。 階数1の特異点に対し、リー球面幾何学の手法で「3つのクラスの特異点」が定義される。これらの結果は先行研究である福井氏と長谷川氏(2012)による「正則曲面の平行曲面の特異点論」の一般化である。平行曲面の場合、平行曲面に現れる特異点の型は、初期曲面の情報から完全に決定されるが、平行曲面の一般化であるリー球面変換の場合、変換後の曲面に現れる特異点の型は、初期曲面の情報から完全に決定されるわけではなく、「特異点のクラス」のみが決定される。この不定性の理由として、リー球面変換が空間形を保たない変換であることが挙げられ、例えば、カスプ的嘴をカスプ的唇に滑らかに変形するリー球面変換が存在する。 また、階数0の特異点としてD4+/D4-型特異点の研究も行った。Porteous(2001)による臍点の特徴付けにより、臍点は双曲型と楕円型に分けられることが知られているが、 我々はリー球面幾何学の手法を用いて、空間形によらない方法で、双曲型臍点と楕円型臍点の判別方法を示した。この手法により、D4+型特異点は双曲型臍点のリー球面変換上に現れ、D4-型特異点は楕円型臍点のリー球面変換上に現れることを示した。この結果は、福井氏と長谷川氏(2012)の結果の一般化である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、我々の研究テーマであった「リー球面幾何学」と、共同研究者である佐治氏、寺本氏の専門である「特異点論」が結びつくことで、リー球面幾何学から見た特異点の研究が大きく進展した。この研究成果について、論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。また、この研究成果に関し、ペンバーは東京工業大学で行われた研究集会「Transformations and Singularities」で講演を行った。 一方で、我々は直川氏(広島工業大学)、安本氏(神戸大学)、緒方氏(神戸大学)と共同で“Discretization of Isothermic Surfaces in Lie Sphere Geometry”というタイトルの教科書を執筆中である。この教科書は、リー球面幾何学と離散曲面論との関連について述べており、院生や専門家向けにまとめたものであり、非常に先進的な内容となっている。 また、来年度の研究準備として、ユークリッド空間内の極小曲面や双曲空間内のブライアント型線形ワインガルテン曲面などを含めた「Weierstrass型の表現公式をもつ曲面族」について、リー球面幾何学で統一的に扱う手法をUdo Hertrich-Jeromin氏(ウィーン工科大学)と共同で研究し始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度の始めに、ペンバーは博士論文の内容をまとめ、学術雑誌に論文を投稿する予定である。この論文は「Lie applicable曲面」についてリー球面幾何学とゲージ理論の手法を用いて研究した論文である。Lie applicable曲面は、双等温曲面、Guichard曲面、L-双等温曲面、線形ワインガルテン曲面などを含む曲面のクラスで、リー球面幾何学で自然に現れる曲面族である。 後継の研究として、ラスマン、ペンバー、Udo Hertrich-Jeromin氏(ウィーン工科大学)、Fran Burstall氏(バース大学)との共同で「Lie applicable曲面に対する多項式保存量の存在性」について研究を行い、論文を投稿する。Lie applicable曲面の特別なクラスにΩ曲面があるが、Ω曲面に対しては平坦接続を用いて、ある種の多項式保存量が定義された。同様の結果がLie applicable曲面に対しても応用できるか研究する。 本研究課題である「リー球面幾何学内のワイエルストラスの表現公式」については、このLie applicable曲面に対し、変換理論を応用することで「Weierstrass型の表現公式をもつ曲面族」がリー球面幾何学で統一的に特徴付けができると期待される。実際、Lie applicable曲面の特別な場合である「L-双等温曲面」については、「リー球面幾何学で特別なDarboux変換を許容する曲面」であるという事実が、上述のペンバーの博士論文内で証明されている。この事実を契機として、すべてのWeierstrass型の表現公式をもつ曲面族の「リー球面幾何学的特徴付け」を行っていく。 この研究課題の達成のため、我々は国内外の研究者と連携し、場合に応じて共同研究を行っていく。また、国内・国際研究集会の場で研究成果の発表等を行い、研究交流を積極的に行っていくつもりである。
|