2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H00011
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
井上 幸 独立行政法人国立文化財機構, 都城発掘調査部史料研究室, アソシエイトフェロー
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 異体字 / 木簡 / 新撰字鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代の日本における漢字字形の特徴を記述するべく、その一視点として、後世の古辞書の掲出字の字形とを比較した。古代の文字資料として、7・8世紀(飛鳥藤原京と平城京の時代)の木簡を対象とし、古辞書は主に『新撰字鏡』を取り上げた。これらの資料は、他の資料と比較した場合に、どのような相違点があるのか、対照作業を行い、その距離をはかる一環と位置付けている。 具体的な作業としては、以前の科研成果(その調査範囲は、『藤原宮木簡』1~3、『飛鳥藤原京木簡』1・2、『飛鳥藤原宮発掘調査出土木簡概報』1~22、『平城宮木簡』1~7、『平城京木簡』1~3、『平城宮発掘調査出土木簡概報』1~42を対象としている)を利用しながら、『新撰字鏡』(天治本)の掲出字形を抽出し、一致、不一致をみた。 結果としては、両資料群に該当する文字種は、500字程度であったが、そのうち、両資料で一致がみられるものが大部分をしめた。また、一致といっても、木簡に複数の字形がある場合は、よく使用される字形のほうがおよそ一致している傾向がみられた。また、『新撰字鏡』には、また、全体からみるとわずかではあるが、掲出字の字形が複数並べられているものや、字体注記があるものがあるので、その場合についても別途、木簡の字形との一致状況を調査した。およその傾向ではあるが、『新撰字鏡』で複数の字形が並んでいる場合には、1つめよりも次のものと一致するものが多いとみられ、字体注記では、“俗”にあたるものの方が多い傾向にあるといえる。その他の古辞書(『篆隷万象名義』や『類聚名義抄』)については、あまり調査が及んでいないので、今後の課題としたい。 上記の成果の一部は、東アジア日本語教育日本文化研究学会(2015年8月22日)で口頭発表した。
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Research Products
(2 results)