2015 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の森林地帯に生息するアライグマの越冬環境の解明
Project/Area Number |
15H00446
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浪花 彰彦 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | アライグマ / GPSテレメトリー調査 / 行動追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、北海道北部の森林地帯におけるアライグマの越冬環境について研究するため、GPSテレメトリー調査を利用した、アライグマの行動追跡調査を行った。調査は、北海道中川郡中川町にある、北海道大学中川研究林の森林内で行った。2015年の9月から10月にかけてアライグマ3頭(オス成獣1頭、メス成獣2頭)を研究林内で捕獲した。捕獲には箱わな(SMCアニマルトラップNo. 1079)と、前脚拘束型わな(Duke Coon Leg Hold Trap)を使用した。アライグマ3頭の捕獲にかかった捕獲努力量は97トラップナイト(TN)で、1頭あたりの平均努力量は32.3TNであった。捕獲したアライグマは、三種混合麻酔薬を使用して不動化を行い、GPS首輪発信器(サーキットデザインGLT-02)を装着した後に放獣し、2016年3月までの間の行動を追跡した。約6ヶ月の行動追跡の結果、アライグマは積雪前には非常に広範囲を移動し、その行動範囲は南北方向1で最大4km、東西方向で最大10kmに及ぶことが明らかになった。また3頭のアライグマは積雪期に入ると行動圏が半径数百メートル程度に狭まり、この範囲内で越冬していることが推測された。アライグマの行動範囲内には、農家の納屋や廃屋といった人工構造物が多数存在していたが、3頭のアライグマの越冬地は森林内にあり、アライグマの越冬地選択においてこれらの人工構造物に依存する傾向は認められなかった。以上の調査結果から、アライグマが北海道北部の森林地帯において、人工構造物に依存せずに越冬していることが明らかになった。このことにより、アライグマの生息域が森林地帯で完結している可能性が示唆される。森林内におけるアライグマの捕獲には大きな労力が必要であるため、今後のアライグマ対策の方針としては、人家周辺での被害防除と加害個体の駆除に労力を集中するのが現実的であろう。
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