2015 Fiscal Year Annual Research Report
血液凝固検査の測定前変動因子の検証-血漿層の違いによる測定値への影響検討-
Project/Area Number |
15H00645
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山内 恵 琉球大学, 医学部附属病院 検査・輸血部, 臨床検査技師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 血液凝固検査 / 遠心分離 / 血漿保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】血液凝固検査は種々の因子が測定値に影響することが知られており、高い検査精度を得るためには検体の適切な処理と保存管理が必要とされる。日常検査においても推奨された条件での遠心操作で血漿分離を行い、また、検査に時間を要する場合には血小板層との接触や不安定因子の活性変動を避けるために分離血漿を凍結保存している。この際、別容器に分注する際には「血小板層を避ける」「血漿層上部1/2~2/3程度」などとされ、厳密な規定はない。この血漿分離、保存を必要とするものとしてクロスミキシングテストで使用する正常血漿の調達があり、健常者血漿をプール混合して複数回の検査に対応できるよう長期保存して使用している。しかし、保存検体の測定値にバラツキを生じるなど使用する検査材料として不適とされることを経験した。これらのことより、本研究課題では遠心後の血漿について分離層の違いによる測定値比較を行い、適正な分離血漿を定量的に定めることを目的とする。また、血漿の保存条件についても併せて検討を行う。 【研究成果】①遠心分離後の患者検体を0.3mlずつ分注し、上層、中層、下層それぞれの測定値比較を実施した。患者検体は対象検査項目(APTT, PT)が基準範囲にある群30例、ワーファリン内服群20例、ヘパリン療法群20例を使用した。いずれの群においても血漿層の違いによる測定値の有意な差は認められなかった。 ②健常ボランティア10名の分離血漿から上層、上層~中層、上層~下層のそれぞれの混合プール血漿を作成し、各分離層の測定値の比較を行った。技術的誤差の影響を考慮し3人の検者がそれぞれ分離操作を行った。各分離層についてAPTTおよびPTの測定値比較を行った結果、いずれの間にも有意な差は認められなかった。分離操作に関わる技術的誤差も認められなかった。また、各血漿検体を-20℃及び-80℃にて1週間、1ヵ間、3か月間で凍結保存し、融解後の測定値の比較を行った。-20℃保存ではいずれの検査項目も測定値のバラつきが認められた。一方、-80℃保存では3か月保存までほぼ一定した測定値が得られた。 【まとめ】 血液凝固検査において、液面から0.9ml(上層~下層)の血漿の測定値には大きな差はないことを確認した。但し、血球比率が高いあるいは血小板数が多い場合、下層の分離操作が困難で血小板の混入の可能性も大きくなることが考えられる。よって、いずれの患者検体においても分離血漿量は液面から0.6mlとし、それ以上の分離は避けるものとする。また、-80℃凍結保存で3か月間は安定した測定値が得られることを確認した。クロスミキシングに使用する正常血漿は複数の正常ボランティア血漿を0.6mlずつ分離混和し、-80℃保存で3か月管理することとした(さらに長期保存については今後の検討とする)。
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Research Products
(1 results)