2015 Fiscal Year Annual Research Report
エージェントベースモデリングの実世界応用-シミュレーションから実世界OSまで
Project/Area Number |
15H01719
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
出口 弘 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (60192655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木嶋 恭一 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 教授 (10134826)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リアルワールドOS / IoT / エージェントベースモデリング / Fog Computing / 自律分散協調 / サービスシステム / マイクロサービス / IoE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『エージェントベースモデリングの実世界応用-シミュレーションから実世界OSまで』と題し、インターネット上でのひと・もの・ソフトウェアなどからなる自律的エージェントの相互作用を支援するシステムの革新を目的としたものである。そのためのアーキテクチャを我々はリアルワールドOSと呼び、これをエージェントベースモデリングの新たな発展領域として、理論的にも情報システムとしても確立することを目的としている。 本年度の成果としては、リアルワールドOSの中核言語であるOWLIEのα版をリリースし、マイクロサービスオーケストレーションのアーキテクチャを提唱した。これに基づき東工大でハッカソンを開催し、更にこのIoTの基幹技術に関しインテルのIoTの開発拠点であるフェニックスとポートランドを訪問し意見交換を行った。3月には東工大で第9回サービスシステムシンポジウム(国際会議)を共催しIoT時代のサービスシステムの在り方について議論を深めた。 理論面については総説の論文を発表。更にシステム開発面と応用面に関して査読論文を2本発表し、関連した特許二つを申請した。 データフローソリューションについては、コジェネを利用した工場でのエネルギー利用等に関する応用事例を開発すると同時に、物作りにおける製造タスクを実物簿記を利用したデータフローソリューションとして表現することで、容易に組替え可能でコードの統合も自然に行える新たな生産管理システムの枠組みを開拓・提唱した。これに関しは、諏訪の中小企業と共同で工場のIoT化に関して幅広い連携を行うことで合意し、工場のシステムとそこでの情報システムの事例としての解析に着手し始めている。 本研究課題に関連して 2016年3月より産業構造審議会分散戦略ワーキンググループ委員に任命されフォグ領域のIoTのアーキテクチャについて専門家としての意見を述べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究『エージェントベースモデリングの実世界応用-シミュレーションから実世界OSまで』は現在注目されつつあるIoTの新たな基幹技術を担うものである。本研究では現在主流であるクラウドによるIoT実装とは異なる、ネットワークのエッジ(Fog Computing)領域での自律分散協調的な観点から、ひと・もの・ソフトウェア等の自律的エージェントからなるシステムの構築に対するアーキテクチャ提案を行っている。この領域での研究開発は本年1月にOpenFog Consortiumがインテル等の主唱でスタートする等世界的にも始まったばかりである。本研究は日本インテルから着目され、本年2月には共同で米国インテルのIoTの研究拠点のフェニックスとポートランドを訪問し3日にわたり集中的に議論を行った。その結果我々と類似の検討を米国でも開始しているが、マイクロサービスオーケストレーション技術に関しては、我々の枠組みが先行しており世界の最先端を行く事が確認できた。なお本年4月には日本インテルから社会人博士が我々の研究室に入学している。 実物簿記を用いたデータフローソリューションによる生産管理やエネルギー分野への応用は、JSTの特許部門に着目され、昨年秋から共同で応用事例の検討を始めている。竹中工務店では我々のリアルワールドOSの基幹言語OWLIEのα版を用いてビル管理システムの実験を行い、これは昨年11月の竹中工務店の研究所公開で発表されている。 さらにプライスウォーターハウスクーパのアナリティクスのグループの東京での会合でも我々のリアルワールドOSを用いたマイクロサービスオーケストレーションの概要について講演を要請され、今後の協力を模索している。 この様に本研究は、その学術的な進捗やシステム開発のみならずそのアーキテクチャが外資系企業等を中心に注目を集めつつあり、計画以上の進捗を得ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在IoTに関する関心が、国内外で急速に高まっている。これはIoTが地球規模での産業構造の変化や再編につながることが予期されているからでもある。そこでは現在主流のクラウド型のIoTのアーキテクチャから、次のステップでFog領域での自律分散協調型のアーキテクチャへの転換が極めて重要な意義を持つ。しかし日本ではIoTの要素技術としてセンサー等の個別の「もの」と、クラウドを用いたアプリケーションは認識されていいるが、それらを繋ぐネットワーク上でひと・もの・ソフトウェアを結びつけマイクロサービスオーケストレーションのためのプラットフォーム・アーキテクチャについては、そのためのOSや領域固有言語(DSL)を開発している企業はなく、研究自体も希薄である。 このような状況を受けて、本年度の研究では順調に進んでいる科学技術的な基盤研究と同時に、それを現実の産業構造の中へ如何にして導入するかという課題と、その結果を基盤技術にフィードバックするという課題を喫緊のものとして進めていきたい。 そこで産業構造審議会分散戦略ワーキンググループ委員で専門委員の立場からこの新しい潮流についての意見を述べつつ、現実の産業応用について、JST特許部、経営共創基盤(IGPI)、竹中工務店、インテル株式会社、プライスウォーターハウスクーパ、諏訪の中小企業等我々の新しい技術に関心を持つ企業や組織と積極的に連携し、リアルワールドOSのオープン・プラットフォームとしての普及を図る為にリアルワールドOSコンソーシアムを組織し、ハッカソン、アイデアソンの開催等積極的な技術の普及を計る。またそこからのフィードバックを得て、それを基盤研究に活かし、更にIoTノード間のオーケストレーションのための設計・実装・運用・改善の技術は、科学技術面と同時にそのプロジェクトマネージメントそのものも本研究の中で開拓していきたい。
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Research Products
(15 results)