2015 Fiscal Year Annual Research Report
南極底層水の昇温・低塩化に伴う深層大循環の変貌予測に関する基礎研究
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15H01726
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
北出 裕二郎 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (50281001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
田村 岳史 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (40451413)
溝端 浩平 東京海洋大学, その他部局等, 助教 (80586058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 極域環境監視 / 南極底層水 / 南大洋 / 温暖化評価 / 海洋科学 / 水塊変質 / 子午面循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、南極底層水の流量の把握と昇温低塩化の機構を調べ、今後大循環へどのような影響を及ぼすことになるかを探るための基礎研究である。初年度は、以下の通り、長期係留系の開発と南極海への設置を行った。 (1)巨大CTDチェーンの開発と試験運用 南極海の深底層に沈み込む高密度陸棚水の挙動を捉えるため、本課題では全長約2300mの巨大CTDチェーンを構築し、2016年1月に南極大陸陸棚縁辺海域に設置する。これに先立ち、CTDチェーンの運用試験のため、7月7日から9月13日に相模湾大島東水道の水深約1200mの地点にCTDチェーン800m分を係留し、親潮系水の貫入を捉える観測実験を行った。この運用試験の結果では、これまでの週1回の観測では判別できなかった親潮系水が貫入するタイミングを捉えることができた。この結果をふまえて、センサー種類と間隔や構造について再検討し、最終的に南極海に設置する系として、合計44台のセンサーを配置した全長2300mの巨大CTD&Tチェーンを作成した。 (2)南極海観測航海 東京海洋大学海鷹丸による南極海での観測航海は、2016年1月15日~2月6日に実施した。南大洋の鉛直子午面循環をとらえることも本課題の一部となっていることから、本年度は南極発散帯周辺海域でCTDによる海底直上までのグリッド観測を実施した。また、上記(1)で作成した巨大CTD&Tチェーンを南極底層水が形成され沈み込んでいるビンセネス湾沖南緯63度水深約3000mの地点に設置した。なお、本年度設置した巨大CTD&Tチェーンは、2017年1月の南極観測航海時に回収する予定となっている。 以上の観測試験および今年度の観測記録の解析結果、並びにこれまでの南極海観測の経緯や今後の計画等に関連する成果については、関連する学会および国際シンポジウムにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南極海の深海に設置する巨大CTDチェーンの構築において、予算的問題を検討しつつ測器をCTDの代わりに高精度水温ロガーに変更してセンサー台数を増やし、鉛直分解能を向上させたCTD&Tチェーンを作成した。センサーを変更した点の効果・影響を調べるため、相模湾で運用試験を実施し、親潮系水の貫入層をある程度判別できることが分かった。 南極海における観測では、2300mの巨大CTD&Tチェーンを構築し、予定した地点に設置することができた。その一方で、海氷の張り出しにより、陸棚上でのCTD観測と短期係留観測は実施できなかった。しかし、海氷の張り出しに関しては、想定していた範囲内であり、陸棚縁辺の観測点を若干変更して対応し、その他の観測はほぼ当初の予定通り実施できた。 本課題で特に重要な観測である巨大CTD&Tチェーンの設置が予定通り実施できた点、および子午面循環を把握するために設けたグリッド状の観測をほぼ予定通り実施できた点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
南極底層水の水塊変質の解明という観点では、長期係留系によるモニタリングは本研究課題において最も重要な観測手法であるため、これまで構築した巨大CTDチェーンを用いた係留観測は今後も継続して実施していく。しかし、今後モニタリング点を数地点に増やしていく必要がある中、限られた予算で係留に使用するセンサーを獲得することが難しい状況にある。その対策としては、経費を抑えた係留システムを開発して効率よく水塊の鉛直構造を捉える方法、および乱流構造を取得し二次的に鉛直流速を推算する方法があり、その両者を組み合わせることを検討している。 まず、係留システムの開発については、自動昇降式フロートを用いた係留系の開発を行う。システムの概略はほぼ決まっており、28年度に導入および運用試験を行い、29年度の南極観測航海における設置を目指している。一方、乱流構造の観測については、28年度の南大洋での観測において、27年度末に導入した自律型乱流プロファイラーをCTDに搭載して下ろし、海面から深海までの乱流場の鉛直プロファイルを捉える予定である。 また、新たに自動昇降式フロートを用いた係留系を開発する利点は、乱流プロファイラーを搭載し長期連続乱流観測を可能にする点である。昇降式フロート係留システムが完成した際には、自律型乱流プロファイラーをフロートに搭載し、長期係留観測を実施する。乱流場のプロファイルが長期にわたり取得できれば、本課題の主たる目標である水塊変質機構の解明や深層循環の流量評価等が、飛躍的に進展すると期待できる。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Helicopter-borne observations with portable microwave radiometer in the Southern Ocean and the Sea of Okhotsk2015
Author(s)
Tamura, T., K. I. Ohshima, J. L. Lieser, T. Toyota, K. Tateyama, D. Nomura, K. Nakata, A. D. Fraser, P. W. Jansen, K. B. Newbery, R. A. Massom, and S. Ushio
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Journal Title
Annals of Glaciology
Volume: 56(69)
Pages: 436-444
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Formation and Variability of Antarctic Bottom Water off Cape Darnley: the Fourth Antarctic Bottom Water2016
Author(s)
Ohshima, K. I., Y. Nakayama, Y. Fukamachi, Y. Matsumura, S. Nihashi, T. Tamura, Y. Kitade, D. Hirano, D. Shimizu, and S. Aoki
Organizer
AGU Ocean Sciences Meeting
Place of Presentation
New Orleans, USA
Year and Date
2016-02-25 – 2016-02-25
Int'l Joint Research
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[Presentation] The fourth Antarctic Bottom Water: Cape Darnley Bottom Water2015
Author(s)
Ohshima, K. I., Y. Fukamachi, G. D. Williams, S. Nihashi, T. Tamura, Y. Kitade, D. Hirano, S. Aoki, and M. Wakatsuchi
Organizer
IUGG 2015
Place of Presentation
Prague, Czuch
Year and Date
2015-07-01 – 2015-07-01
Int'l Joint Research
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