2015 Fiscal Year Annual Research Report
ビスフェノールの核内受容体を介した内分泌撹乱シグナル毒性
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15H01741
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下東 康幸 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00211293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 綾美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60404050)
劉 暁輝 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60596849)
中川 裕之 福岡大学, 理学部, 教授 (80274562)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有害化学物質 / 内分泌かく乱物質 / ビスフェノールA / 核内受容体 / シグナル毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
内分泌撹乱化学物質・ビスフェノールA(BPA)の低用量効果が懸念されるなか、我々は特異的ターゲットとしてエストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)を世界に先駆けて発見し、報告した。そして、この発見を契機に、BPAの核内受容体を介した機構解明に取り組み、二つの異なる端緒・現象を解明した。一つは 『ERRγに結合したBPA分子から生成するラジカルが、DNAメチル化を促進、あるいは抑制する現象』 である。本研究ではまず、これらの分子機構の解明をめざす。もう一つは、『エストロゲン受容体ERにERRγが協働的に働いて、BPAの弱い活性を大きく増強し、タンパク質の過剰発現が起こる現象』 である。具体的にはどのようにして活性増強されるのか? その分子機構の解明をめざす。 ビスフェノールA食餌ショウジョウバエ・マウスについて、多動性症状、低活動性症状の概日リズムに影響が及ぶこと、その主たる原因が概日リズム伝達神経ペプチド、及びその遺伝子にあることが判明した。この神経ペプチドは、ショウジヨウバエとマウスとでは異なること、また、マウスにおいてはオスとメスとで異なることも判明した。このような違いは、遺伝子発現を支配する遺伝子に対する転写因子・核内受容体の制御機構が生物の種や性により異なることに起因すると思われた。一方、BPAラジカルが生成するかについては種々に調査したが、現在までに確証は得られなかった。もう一つの大きな課題であるER-ERRの協働作用については、リガンド活性化型核内受容体と自発活性化型核内受容体の間に起こる一般的な分子機構である可能性が高いことが示された。今回特に、TR-RORでも立証されたことはこれを非常に強く支持した。さらに、核内受容体の直接の分子間相互作用はなく、未知の分子が介在している可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画に伴い、ほぼ順調に計画を推進している。本年度に研究室の移転(箱崎キャンパスより伊都キャンパスへ)があり、約3か月実験研究が中断したが、その前後の鋭意な取り組みにより進展度には大きな影響はなかった。ラジカルの寿命は通常でもきわめて短く、検出感度の問題もあり周到な準備と工夫された実験系が必要なことが多くの専門家より指摘され、可能な路を手探りで進めることになるが、基質DNAの調製がキーポイントであることが明らかになった。核内受容体の協働作用についてはこれまで報告のない新事実が相次いで判明しており、全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究進展が順調な核内受容体の協働作用分子機構の解析については、年次計画に従って、あるいはそれ以上に計画を前倒して展開する。ラジカルに関しては、もう一つの可能性であるDNAメチル化酵素への影響も調べる。また、メチル化基質となるDNAを設計合成して、より高効率で検出関知できる試験系の構築を新たに工夫する。
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Research Products
(43 results)