2015 Fiscal Year Annual Research Report
彩色塗装のある歴史的木造文化財建造物の加湿温風処理による虫害処理方法の検討
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15H01778
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
木川 りか 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 室長 (40261119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 義久 京都大学, 農学研究科, 教授 (10173402)
日高 真吾 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (40270772)
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 主任研究員 (00392548)
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 研究員 (50466645)
斉藤 明子 千葉県立中央博物館, 自然誌・歴史研究部, 主席研究員 (90250141)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歴史的建造物 / 虫害対策 / 文化財保存 / 殺虫処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人体や環境に対して安全で、かつ有効な殺虫処理として、既に欧州などで小型の文化財について実績のある調湿温風による殺虫をとりあげ、これを漆などの彩色を施した日本の大型建造物に適用する手法を確立することを目的とする。 (1)プロトタイプチャンバー(約30 m3)の試作と試験:京都大学にて気密・断熱性を確保し、調湿温風を発生・循環できるチャンバー、およびその制御プログラムを試作し、殺虫条件として望まれる温度湿度制御が可能かどうか試験を実施した。昇温、昇湿についてはほぼプログラム通りの制御が実現され、殺虫に必要な温度(60℃)、かつ木材が乾燥しないような湿度(約60%RH)については問題なく制御できるものとなった。(2)彩色層を毀損しないための安全処理条件の明確化:彩色層・木部における含水率とひずみ分布を測定し、彩色層を毀損しないための安全処理条件を明確化するための測定を継続している。(3)上記原理とプログラムを使用した小規模処理装置の試作と処理:試作した制御プログラムを用いて、博物館資料の山笠基台部の竹、縄部の調湿温風処理用小規模装置を試作し、装置が順調に機能することが確かめた上で山笠基台部の殺虫処理を実施した。(4)実地(大規模)処理を念頭においた設計と準備:大規模な処理のエネルギー効率を向上させるため、装置の仕様と断熱方法を検討している。(5)加湿温風処理の温度湿度分布のシミュレーションによる検討:建物を加温するにあたって、低温になる可能性が高い場所を予測するため、現在試作したチャンバーについてシミュレーションを行い、低温になる箇所を解析した。(6)処理対象となる建造物における虫の調査、および建物内清掃の実施:処理候補となる建造物2棟について、捕虫テープを設置して昆虫の調査を実施した。また建物内の床下、小屋裏などを清掃し、処理前後の効果判定が可能な状態に準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していたプロトタイプ装置の試作、諸条件のなかでの木材のひずみの測定が実施され、また試作したシステムやプログラムが実用的に働くことを確認できたため、進捗状況は順調である。次年度はさらに詳細な測定と屋外での大きな規模の処理をめざした検討を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度目標としていたプロトタイプのシステムが無事稼動したのを受け、次年度以降は建造物規模の実地での処理が可能なシステムの試作をめざし、エネルギー効率のよい電力駆動のシステム構成、断熱性・気密性についても設計の専門家とともに検討を行い、文化財塗膜に影響の少ない処理条件を実現できる装置の試作に臨みたい。
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Research Products
(2 results)