2017 Fiscal Year Annual Research Report
防護服・PPEのための新規機能・構造材料の創製および現場活動に即した評価法の確立
Project/Area Number |
15H01789
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森川 英明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10230103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 晋一 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 人間工学研究グループ, 特任研究員 (00167438)
倪 慶清 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (00252544)
山内 正剛 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 上席研究員(定常) (00260240)
堀場 洋輔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (00345761)
亀谷 英杏 文化学園大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00434176)
鮑 力民 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10262700)
坂口 明男 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40205729)
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40332259)
篠原 克明 国立感染症研究所, バイオセーフティ管理室, 主任研究官 (60117356)
後藤 康夫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60262698)
若月 薫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (60408755)
佐古井 智紀 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (70371044)
嶋崎 典子 国立感染症研究所, インフルエンザウイルス研究センター, 研究員 (80466193)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 防護服 / 繊維 / 衣服 / 高分子材料 / 極限環境 / 温熱快適性 / 安心・安全 / 危機管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では日本における個人防護服(PPE)に関する研究基盤を構築し,当該領域の研究を先導的に推進することを目的としている.本年度は以下の取り組みを進めた.①Mechanical Protection:防刃効果に寄与する構造特性が明らかになって来たことから特殊織構造,BC等の材料開発・検証を行った(鮑,坂口,倪,森川).②Thermal/Fire Protection:新たな防炎・耐熱評価法や消防ヘルメット・グローブ等の断熱効果に関する基礎研究を進めた(若月).③Biological Hazard Protection:血液浸透性・飛沫透過性評価,およびX線CTによる材料の構造分析を行い,新たな感染防護材料設計の方向性を検討した.さらにナノファイバー構造制御による超撥水性機能材料の開発を進めた(森川,後藤).また水中作業用防護材料としてヒルに対する忌避効果を有する生物活性物質およびサクラマス誘引効果を有する生物活性物質を合成・開発しフィルム化および効果の確認を行い,新たな機能性繊維高分子材料への応用研究を進めた(西井).④Chemical Hazard Protection:新規放射線遮蔽材料を開発し諸評価を行った(山内,森川).⑤PPE全般の課題として,防護服内の温湿度モニタリングシステムの開発(若月,森川),リバースエンジニアリングによる3次元構造捕捉と温熱特性・動作特性解析(亀谷,森川,若月,堀場,佐古井)を推進した.またヒートストレスの基礎となるWBGT指数のモデルについて検討を進めた(澤田,佐古井).⑦ISO/TC94,SC/13会議に出席しISO規格について議論・意見交換を行った(山内,篠原,澤田,若月).⑧研究代表者・分担者が中心となって学術誌Industrial Healthに防護服特集を組み,本課題による成果についても投稿・発表を行った(澤田,森川,若月).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
防護服・防護材料分野は対象となる現象や用途(活動現場)・機能が幅広く,全てを網羅的に研究推進することはできない.本課題では4つの防護分野を設定し,従来研究の見直しを行うと共に各分野のキーとなる研究テーマおよび研究手法について取り組みを進めてきた.4分野のうち防刃,防炎・耐熱,感染防護に関しては,従来のISO/JIS/NIJ法等を再考した新たな防護性能評価手法(物性の定量化や素材の構造評価法)を複数確立しつつある.またこれら現象や原理に基づく評価法をベースに新規防護素材設計に必要となる定量的設計指針を構築しつつあり,今後より高度な機能を有する材料の研究・開発が進むものと考える.繊維構造材料・複合材料やナノマテリアルについては,従来の材料からさらに極限環境下で機能する材料開発へと進展している(倪,鮑,坂口,後藤,森川).また有機合成による生物活性物質の研究では,繊維高分子材料への練り込みやその効果の検証などにより,防護素材に関する分野融合的な研究として大きく進展した(西井).今後,新たな機能性繊維材料の実用化に繋がるものと考える.一方,本研究課題で開発した複数の防護性能評価法については,国立感染症研究所,放射線医学総合研究所,労働安全衛生総合研究所の研究分担者らと逐次議論をしながら,ISO規格や海外研究機関との国際連携等の課題について検討を進めている(鮑,若月,篠原,嶋崎,山内ら).また今後の個人防護服(Personal Protective Equipment)全体の課題として,コンパティビリティや「人間-衣服系」としての防護服を捕捉することが必要と考えているが,このためのヒートストレス指標の整備(澤田,佐古井)やセンシングやコンピュータシミュレーションによる新たな手法の確立(堀場,佐古井,若月,亀谷,森川)を進めており,これらも一定の成果を上げてきている.
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Strategy for Future Research Activity |
本課題期間の後半に入り,これまでの各研究成果を整理して位置づけを行った上で,2018年度,2019年度の研究を進める.基本的にはこれまでの計画通りに,各防護分野における諸現象に基づいた材料性能評価法を開発・確立すると共に,それら定量的評価法をベースに新たな防護機能素材の開発をさらに進め,実用に資する材料に絞り込む研究を引き続き行う計画である.まず評価法についてはより多くの素材等で検証データを蓄積すると共に,今後のISO・JIS等への導入・展開について検討を進める(若月,鮑,山内,篠原,嶋崎,澤田,森川).機能性繊維材料の開発については,ファイバーレベルでの機能化(防護材料として期待される湿式不織布等の紡糸技術,高機能ナノファイバーの創製技術,および新たな生物活性物質・有機合成物質等の繊維高分子材料への練り込み・実用化)に関する研究をさらに進める(後藤,森川,西井).同様にテキスタイルの構造設計(新規織編組織,3次元織物,繊維強化複合材料の開発)についても現在の研究をさらに進展させる計画である(倪,鮑,坂口,若月,森川).また「人間-衣服系」視点における防護衣服の温熱快適性・動作快適性研究については,衣服構成(パターン)~3次元設計・形状付与~物理特性評価までを一貫したシステムとして構築できるよう担当者間の連携を強めながら研究を推進する(亀谷,佐古井,澤田,堀場,若月,森川).一方,本研究課題の成果を社会実装するため,警察庁・消防庁・国立感染症研究所など関連する省庁・評価機関(テストハウス)等との情報交換を進めると共に,ESPC(Europian Society of Protective Clothing)などでの交流をベースに海外大学・研究機関との連携研究に関する具体的な検討を進める(若月,鮑,倪,山内,篠原,澤田,森川).
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Research Products
(62 results)