2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋機能とサルコペニアに関連する消化管ミクロビオームの基盤研究
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15H01827
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 明人 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (00241646)
長崎 正朗 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (90396862)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミクロビオーム / サルコペニア / 唾液 / 便 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度と同様に、生活習慣、握力、生化学情報に加え、口腔、糞便等の生体試料を収集した。協同組合仙台卸商センターの組合員2126名に調査資料を配布し、578名の対象者から研究参加への同意を得た(参加率は約27.2%)。このうち、前年度にも研究に参加した者は133名であり、生活習慣、握力、と口腔内細菌に関する項目に欠損がある4人を除外した結果、追跡できる分析対象者は129名である。また、2年間に渡って横断的分析の最大サンプルサイズは750~800名と想定している。今年度分の生活習慣、握力、および健診のデータはすでに揃っているが、口腔・糞便検体の解析は進行中である。糞便検体に関してテスト検体を用いて解析パイプラインを構築し、現在約200人分の検体について解析が進行中である。一方、96検体同時にDNA抽出できる手法を検討し、従来の4倍のスピードでDNA抽出が行える手順を確立した。 前年度すでに収集した検体のうち、パイプラインが確立している唾液と今回開発した歯ブラシ液の検体についてシークエンス解析を行った。その結果、歯ブラシ液は、採取が簡便であるだけでなく、より多くの細菌叢が含まれ情報量が多いことがわかった。さらに、申請者らは、前年度のデータに基づき、勤労者222名を対象に口腔内細菌と握力、生活週間、健康状態との関連を分析した。研究対象者の年齢の平均(SD)は44.5歳(11.2)であり、範囲は20~69歳であった。女性は67人(30.2%)、男性は155人(69.8%)であった。多変量線型回帰分析により(年齢と性別調整済)、握力と負の関連を示すいくつかの菌種が認められた。さらに、その他の生活習慣や健康状態との関連性を検討した結果、口腔内細菌叢と喫煙習慣、飲酒習慣、花粉症、鬱指標等との関連の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
職域コホートの中の縦断研究に関しては期待以上の進展があったが、動物モデルに関しては遅れているため、概ね順調とした。1)期待以上の進展については口腔内の唾液検体と歯ブラシを利用した検体採取は後者が簡便かつ情報量が多いことがわかり、現在口腔内微生物検体採取の方法に関する論文を作成中である。広く疫学調査で利用可能な専門家を要しない口腔内微生物採取方法として提案する予定である。横断調査についてはすでにさまざまな微生物叢クラスタリング方法を検討しており、握力、喫煙、花粉症、飲酒習慣との関連が認められ、横断研究の論文を作成中である。縦断研究については平成28年度参加者578名中129名が平成27年度も検体採取しており信頼性や妥当性の評価も含めて縦断解析が可能となった。一方、糞便解析についてはコホート研究で用いられているさまざまなDNA抽出方法を検討し、ハイスループットのパイプラインを確定したが、現在年度にまたがってシークエンシングを行っているため、データ解析が遅れている。2) やや遅れている点については、除菌マウスにアウトカム属性の両極に分布する被験者検体の糞便サンプルを移植予定であったが、上述したように解析が遅れている。解析結果に基づいて実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、既存コホートを対象とした検体採取は終了し、 A)論文作成・投稿:1)口腔内微生物叢の簡便な検体採取方法についての論文, 2)口腔内微生物と生活習慣類型との関連についての論文の2編の投稿を上半期に行う。また縦断研究の結果をまとめ論文化をはかる。筋力以外の生活習慣や危険因子との関連も明らかになってきており、さらに新しい知見を加えることが期待される。口腔内微生物の解析は歯周病など特定のアウトカムに限定されており、現在得られている知見により口腔内微生物叢の利活用が生活習慣病危険因子や行動変容指標などとして拡大できる可能性が極めて高い。したがって糞便解析は遅れているが、口腔内微生物解析を重点化する。 B)やや遅れている糞便メタゲノム解析を進め、パイプライン化した手法の妥当性を検証後、糞便メタゲノム解析結果をまとめる予定である。 C) 進展していなかった除菌マウスの蛇毒による骨格筋損傷モデルの進捗を加速し、除菌モデルの損傷回復過程遅延の確認、損傷回復の確認時期と方法、糞便移植のタイミングや量など条件検討を行い、最終年度までに予定通りの実験が行われるよう進捗管理を行う。
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