2016 Fiscal Year Annual Research Report
批判的地域主義に向けた地域研究のダイアレクテイック
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15H01851
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小川 英文 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20214025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)
佐々木 孝弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10225873)
島田 志津夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (20624117)
小松 久男 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30138622)
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
山内 由理子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50626348)
菊池 陽子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60334447)
小田原 琳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (70466910)
米谷 匡史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80251312)
大川 正彦 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80323731)
島田 周平 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90170943)
李 孝徳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90292721)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域研究 / コンフリクト / グローバリゼーション / 帝国主義 / 植民地主義 / 島嶼研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では研究計画に従って前半と後半にそれぞれ国際シンポジウムを開催した。前半では研究計画で示した「国際政治のローカリゼーション」という研究論点のもと、ナイジェリアをケーススタディにして国際政治がどのようにして本科研の対象地域のひとつであるアフリカという地域で交差しているのかを議論して検証しつつ、これまでの地域研究のパースペクティヴを再考する国際シンポジウム「アフリカの紛争を地域から考える」を開催した(2016年6月11日於東京外国語大学)。後半には「トランスボーダーな宗教復興の拡大」という研究論点のもと、本科研の対象地域である中央アジアに着目して、近代化が人々に要請してきた世俗主義とは対立する形で宗教的アイデンティティを強め、超国家的な政治勢力になっている中央アジアのイスラームの歴史性を検証すべく、国際シンポジウム「近現代中央アジアにおけるイスラームの展開」(2016年12月10日於東京外国語大学)を開催した。 また本科研では批判主義的地域研究を模索するための経年的な企画として「間帝国研究」に取り組んでいるが、昨年度末には大日本帝国の版図に注目して2日間に渡るワークショップ「近現代東アジアの人流統治を問い直す~帝国の力が重ね書きされた場所で~」(2017年3月4日が「指紋管理技術の帝国間連鎖とそのアクチュアリティ~」、3月5日が「強制送還」から問い直す主権と主体の歴史性」)を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、本科研が対象地域として選定しているアフリカと中央アジアに注力して、地域の固有性という観点から、アフリカでグローバリゼーションのもとで急激に進展している社会変容と、イスラームが超国家的な勢力になっている中央アジアの宗教文化に着目してそれぞれの固有の社会的レジリエンスを検証し、それを分析するための地域研究の新しい枠組みについて国際シンポジウムを前半と後半にそれぞれ開催して議論することができ、そうした知見を日本国内だけでなく海外との研究者と共有できることができている。 また、本研究の遂行過程で、研究者たちの議論から「島嶼研究の新地平」と「間帝国研究」という、本科研の批判主義的地域研究を展開するための新しい地域研究のフレームワークを構築する方向が出てきているが、沖縄研究の若手の研究者を中心にこうしたフレームワークに資するワークショップを複数開催し、沖縄と大日本帝国をケーススタディとしながらも、そうした領域を普遍的な研究視点へとつなげられるような新しい地域研究について具体的なヴィジョンを共有することができ始めている。 本科研で示していた5つの研究論点にもとづいた国際シンポジウムが順調に開催できており、2012年度に東京外国語大学に新しく設置されたアフリカ、中央アジア、オセアニアのうち2つの地域研究の新しい研究取り組みについて国際シンポジウムで開示することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は前半では「トランスボーダーな宗教復興の拡大」と「国際政治のローカリゼーション」という研究観点が交差する経済発展と社会変容が目覚ましいインド・ベンガル地域に焦点をあて国際シンポジウムを開催する予定だが、そこではこれまでのインド・ベンガル研究を再考しつつ、歴史学と現在的な地域研究をつなげるために必要な地域研究の方法論について議論する。 また後半では、本科研で見出されてきた「間帝国研究」という新しい地域研究のフレームワークに着目しつつ、本科研の研究計画で示した研究論点としては「歴史と責任の認識をめぐる抗争」と「国家の下位集団による社会的承認の創発化」の交差する第二次世界大戦期におけるマイノリティの戦争動員について国際シンポジウムを開催予定である。 また、本科研で注力しているもう一つの研究のフレームワークである「島嶼研究の新地平」に関しても、いくつかのシンポジウムを行って、その学的な射程について議論する計画を立てている。 以上の計画を遂行することで、昨年度に続きこれまでの地域研究の限界点や問題点を洗い出しつつ、新しい地域研究の在り方についてより具体的な方向を出すための議論を始める予定である。
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Research Products
(32 results)