2017 Fiscal Year Annual Research Report
法的本質論を踏まえた非営利団体の地位と役割及び団体訴訟に関する比較法的総合研究
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15H01913
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
亘理 格 中央大学, 法学部, 教授 (30125695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 裕之 中央大学, 法務研究科, 教授 (10169021)
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
小澤 久仁男 香川大学, 法学部, 准教授 (30584312)
田中 啓之 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (60580397)
岸本 太樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90326455)
深澤 龍一郎 九州大学, 法学研究院, 教授 (50362546)
高村 学人 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80302785)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境保護団体 / 消費者団体 / 団体訴訟 / 訴訟要件 / 承認団体 / 非営利団体 / 権利侵害要件 |
Outline of Annual Research Achievements |
消費者団体訴訟の制定などわが国の団体訴訟立法を理論的に主導してきた民事訴訟法研究者を招いての講演や研究会等を通して、集団的利益保護のための団体訴訟には、個別的利益の集合による集合型団体訴訟(aタイプ)、個別的利益訴訟と並んで集団的利益固有の訴訟を想定し得る並存型団体訴訟(共同利益型団体訴訟とも言う。bタイプ)、専ら集団的利益に基づく訴訟しか想定し得ず個別的利益訴訟は想定し得ない独立型団体訴訟(純粋公益団体訴訟とも言う。cタイプ)という3類型を想定し得ることが明らかになった。 以上の3類型を前提に、(1)日本と諸外国においていかなるタイプの団体訴訟が認められてきたか、(2)それは訴訟法上の一般要件の適用を通して判例で認められるのか、それとも特別の立法措置により認められるのか、(3)仮にそれが判例上または立法上認められていないとすれば、その理由や根拠は何かという3つの問題を解明すべく、フランスでは研究者や裁判実務家との共同シンポジウムを開催し、ドイツでは連邦自然保護庁及び環境団体訴訟研究の第一人者へのヒアリングを実施した。以上により、フランスではaとbタイプの団体訴訟が行政判例で一般訴訟要件の柔軟な解釈適用により広く認められており、cタイプについては、立法措置により承認団体に刑事私訴制度を拡充する形で認められているのに対し、ドイツではaタイプの団体訴訟は任意的訴訟担当の手続で認められるが、bとcタイプの団体訴訟は一般訴訟法上は認められず、個別の立法措置を通して承認団体に、あくまでも客観訴訟として認められることが明らかとなった。保護規範説的立場から権利侵害を要求するという点でドイツ法的発想を共有してきた日本法の場合、仏独双方の法状況の詳細かつ客観的分析を通して各々の制度的歴史的要因及び機能的長短を明らかにし、以て今後の立法化の方向性を解明すべきであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
団体訴訟の可能性についてフランス法とドイツ法間の対立とその理論的背景を解明し得たことが、本年度の研究の最大の成果であり、これにより、わが国における環境団体訴訟導入の可能性を、一般訴訟法上の要件拡充による導入の可能性及び立法措置による導入の可能性という双方につき検討していくための、確固たる基礎を築くことができた。また、立法措置による団体訴訟の導入という方向を選んだ場合、団体承認制度採用の妥当性と承認要件、行政過程への事前参加権との関係及び事前参加に訴訟提起への排除効を付与するか、何らかの排除効を付与するとした場合でも、それを単なる手続的排除効に止めるか、それとも実体的な主張制限を含む実体的排除効まで拡げるか等々、制度設計上重要な検討課題があることも明らかとなった。以上により、今後2年間において本研究計画を更に推進するための明確な見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、団体訴訟の可能性に関するフランス法とドイツ法間の対立の理論的要因を更に明確化するための研究を進める必要がある。特に権利侵害要件を要求しないフランス法においても、団体訴訟の「主観的権利構成」は採用し得ないかを明らかにする必要がある。他方、個別立法措置の枠内で、しかも承認団体に限ってしか団体訴訟の可能性を認めようとしないドイツ法においても、核廃棄物中間貯蔵施設の設置場所決定に関しては、ゲマインデに、個別法により自治権侵害に基づく提起可能性が認められており、このようなゲマインデ訴訟をいかなる性質の訴訟と把握すべきかが問題となる。 第2に、フランスやドイツとは異なる伝統と法体系を擁するイギリス法について、環境団体訴訟や消費者団体訴訟の提起可能性が認められるか、またどのような要件の下で認められるかを、その理論的及び実定法的な根拠や背景も含めて解明する必要がある。 以上を踏まえて、わが国における環境団体訴訟の提起可能性について、法制化の制度設計の検討に向けた理論的整理作業を行う必要がある。
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