2017 Fiscal Year Annual Research Report
2次元無機ナノシートのヘテロ累積による新奇機能開拓
Project/Area Number |
15H02004
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐々木 高義 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアー キテクトニクス研究拠点, 拠点長 (70354404)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに合成に成功した新規層状ペロブスカイトRbCa2MnNb3TiO13を基にMnに換えてNi, Co, Feの導入を試みた。その結果わずかに不純物相が含まれるもののNi, Coに対しては同様の新規ペロブスカイト相が得られることが確認できた。一方Feの場合は、3価に酸化されやすいためか、不純物相が多かった。 一方、Co2+とFe2+の混合塩(モル比5:1)で加水分解・均一沈殿させることにより、サイズが揃ったCo5/6Fe1/6(OH)2ブルサイト型六角板状結晶が得られた。これにヨウ素を作用させたところ、特異組成、低い層電荷密度のCo2+5/6-Fe3+1/6層状複水酸化物(LDH)が生成することがわかった。 前年度見出した酸化チタンナノシートのDMSO分散ゾルをスピンコートすることによる稠密配列単層膜形成に関する知見をさらに発展させるべく、もう一つの重要なナノシートであるペロブスカイト型ナノシート(Ca2Nb3O10)について同様な検討を行ったところ、ナノシート濃度、回転数を最適化することで、様々な基板上に稠密配列できることが確かめられた。 高いレドックス性を示す酸化マンガンナノシートの水系コロイド溶液にポリエチレンイミンを添加することで、単分散性を維持したまま電荷を正に反転させた。このサンプルを酸化グラフェンもしくは還元型酸化グラフェンのコロイド溶液と混合するという簡便な操作により、両者が分子レベルで交互に積層した超格子的ヘテロ複合体の合成に成功した。得られたサンプルをアノード活物質としてLi, Naによる電気化学的充放電特性を調べたところ、それぞれ1325, 795mAhg-1という高い容量を安定に与えることが明らかになった。この大きな容量は酸化マンガンナノシート間にイオンが出入りするトポタクティック挿入・脱離にとどまらず、ナノシート自体が金属まで還元されることに伴ういわゆるconversion反応が関与した容量と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では1)組成、構造を精密にチューニングした無機ナノシートの合成、2)2次元ナノシートのヘテロ集積・複合化、3)ヘテロ集積体デザインによる機能開拓を重点実施項目として研究を推進しているが、いずれにおいても当初計画を上回る進捗が得られていると考えている。1)では酸化物、水酸化物系ともこれまでに様々な新規層状化合物の合成を達成し、これらをソフト化学反応を使って単層剥離し、多彩な機能を発揮する2次元ナノシートを合成した。2)ではナノシートのレイヤーバイレイヤー累積を可能とする新しい手法としてスピンコート法が適用できることを示し、短時間で簡便に高品位ナノシート膜を構築できる方法を開発した。またナノ薄膜だけにとどまらず、異種ナノシートを超格子的に再積層して、バルク量のサンプルを得るプロセスについても開発し、多様なナノシートの組み合わせに適用できることを明らかにした。3)については本格的な検討を始めたところであるが、誘電性ナノシートと強磁性ナノシートを用いて構築した超格子膜にmultiferroic特性が発現することを見出すなど、本アプローチの有効性を示す興味深い例がすでにいくつか見出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では上記の3つを重点実施項目に位置付けて研究を推進している。前半期においては1および2に重点を置いてきたが、今後は3に注力する方針で臨む。 1については新規合成した層状ペロブスカイト酸化物や層状複水酸化物の反応性の解明とそれを利用したナノシート化について検討する。 2では前年度までに各種ナノシートのDMSO分散ゾルをスピンコートすることにより、ナノシートが大きな隙間、重なりを作ることなく稠密配列して単層膜が形成でき、さらにこれを繰り返すことで多層膜が構築可能であることを明らかにした。今後はその発展として、本プロセスを用いた異種ナノシートの超格子膜やヘテロ構造膜の構築に挑戦する。 3ではこれまでに合成した酸化物ならびに水酸化物ナノシートを構築部材とし、これらを様々なプロセスでヘテロ接合、複合化して機能開発を重点的に実施する。スクリーニング的試みも含めて様々な組み合わせでのヘテロ累積、複合化について幅広く検討を行うことを計画しているが、特に硫化モリブデンナノシートと還元型酸化グラフェンの複合化によるエネルギー貯蔵機能、電極触媒機能の実現、酸化チタンナノシートと硫化モリブデンナノシートのヘテロ複合化による高活性光触媒能の実現の可能性について早急に検討を進める。
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Research Products
(35 results)