2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ相分離強誘電体薄膜のナノ界面応力と分極自由回転現象の起源
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15H02021
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60302981)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / ナノ相分離薄膜 / マルチフェロイクス / 酸化物エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の成果は以下のとおりである。 計画1:同時蒸着が可能なVAN 薄膜の作製に特化したPLD 装置の開発と薄膜作製 既存のPLD装置に、ガルバノミラーシステムを導入した。これにより、ターゲットを交換せず、レーザーの光路をミリ秒単位で切り替えることで、打ち分けでありながら2つのターゲットの成分をほぼ同時に堆積し、組成を制御できるようになった。また、従来の打ち分けによるPLD法により、スピネルCoFe2O4(CFO)の代わりに、同型NiFe2O4(NFO)と強誘電体相であるビスマス層状ペロブスカイトBTFO15とのナノコンポジット膜を作製したところ、同様に相分離することがわかった。また、CFOとのナノ相分離膜では、製膜温度が高温でBTFO15が生成するのに対し、NFOとの相分離膜では、低温でBTFO15が安定化され、ナノレベルで共存するスピネル相の化学種の違いにより、BTFO15相の生成しやすい製膜温度が異なることが明らかとなった。 計画3:VAN薄膜の構造・応力の精密解析については、当初のGPA解析に代わり、TEM像のFFT解析による応力解析を試み、その有効性を検討した。 計画4:既存のAFM装置に、PFMやMFM、ピコ電流測定が可能はオプションを導入し、ナノ相分離膜の物性評価に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1、4については、当初の計画を達成するとともに、特に計画1では、ナノレベルで共存するスピネル相の化学種の違いにより、BTFO15相の生成しやすい製膜温度が異なる想定外の結果を得ることができた。また、計画3では、当初のGPA解析に代わり、TEM像のFFT解析による応力解析を新たに検討し、まずまずの成果が得られ始めている。一方、計画2の3D応力分布と強誘電体に及ぼす応力効果の理論解析はあまり進展がなかった。以上から総じて、概ね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1:同時蒸着が可能なVAN 薄膜の作製に特化したPLD 装置の開発と薄膜作製 では、27年度に開発した同時蒸着PLD 装置を用いて、基板による配向面、CFO/BTFOの混合比、成長温度、堆積速度を系統的に変化させて、それぞれの条件で酸素分圧を最適化し、混合比や分離サイズを精密に制御した薄膜を作製する。作製した薄膜の相同定、結晶性の評価には、既設のX 線回折装置を用いる。条件の最適化に時間を要する場合は、コンビナトリアル薄膜技術を適宜活用して、高効率化を図る。同時蒸着でのコンビナトリアル合成は、スパッタ製膜で確立された自然傾斜膜法を採用する。 計画3:VAN 薄膜の構造・応力の精密解析では、 計画1で作製したVAN 薄膜の混合比や分離サイズ、応力分布の解析を継続する。 計画4:強誘電性、強磁性のナノ物性評価では、27年度に、既存のAFM 装置に導入したPFM やMFM、ピコ電流測定を用いてナノスケールでの強誘電特性や磁性を評価する。また、電気化学等価回路インピーダンス解析法を用いた、界面欠陥や誘電率などのマクロな物性評価法について検討する。
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