2016 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノウォールシートエッジエレクトロニクスの創成と単一細胞の分化誘導制御
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15H02032
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀 勝 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (80242824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 博基 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50345930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分化誘導 / カーボンナノウォール / 電気刺激 / 周波数依存性 / ヒト由来骨芽細胞様細胞 / ノジュール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、単一立体細胞の分化誘導制御技術の開発を遂行した。ガラス上で培養した細胞の形態は紡錘状を示すのに対し、CNW上では球形の細胞形態を示すことがわかっている。その特性の発現には、シートナノエッジからの電気化学作用が影響するものと考えられ単一立体細胞の特定部位を電子、磁性、化学的に刺激し、細胞の感受性や分化誘導に与えるためのデバイスを作製した。具体的には同デバイスを用い、CNW足場上での細胞成長によるシートナノエッジの効果と、CNWを介した細胞への電気刺激の効果を重畳するによる、細胞の増殖と分化制御の実現を目的として、研究を行った。ラジカル注入型プラズマ励起化学気相堆積装置を用いてTi基板上にカーボンナノウォール(CNWs)を成長し、同基板上でヒト由来骨芽細胞様細胞 (Saos-2) を37度、二酸化炭素5%の環境で培養した。電気刺激は振幅226 nAの方形波をTi基板に印可した。100時間培養後における細胞数と、10日間培養後における骨芽細胞における細胞外カルシウム量に対する電気刺激の周波数依存性を調べた。前者は、骨細胞への分化の程度を評価する指標として広く用いられている。CNWs上で周波数10 Hzの電気刺激を加えた場合において、商用ディッシュと比較して27%の細胞数の増加と56%の分化抑制が確認された。一方、蛍光顕微鏡観察や走査型電子顕微鏡観察においては、細胞の集合体であるノジュールや、CNWsの形状を反映した細胞先端の形状などが観察された。これらの結果は、CNWsと電気刺激の組み合わせの細胞制御手法としての有用性を示唆するものと考えられる。特に、分化を抑制しつつ増殖速度を上昇できることは、骨粗鬆症の再生医療技術を用いた治療の実現に資するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNW足場上での細胞成長によるシートナノエッジの効果と、CNWを介した細胞への電気刺激の効果を重畳可能な、細胞培養・分化制御デバイスを構築し、実際に同デバイスを用いたヒト由来骨芽細胞様細胞(Saos-2)の培養において、電気刺激の周波数に依存した特異的な分化抑制を発見し、同細胞の分化を抑制しつつ、増殖促進が可能であることを見出した。特に、分化を抑制しつつ増殖速度を上昇できることは、骨粗鬆症の再生医療技術を用いた治療の実現に資するものと期待される。一方で、蛍光顕微鏡観察や走査型電子顕微鏡観察から、細胞の集合体であるノジュールや、CNWsの形状を反映した細胞先端の形状などが形成されていることも見出し、その作用機序の解明も進めた。シートナノエッジ足場の効果と電気刺激効果の重畳という新しい細胞制御の提案、それを可能にする細胞制御デバイスの構築、それによる制御可能性の実証、さらにその作用機序の解明まで進んでいることから、計画は概ね順調に進展していると判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
単一立体細胞の分化誘導技術の高精度化と多様化を引き続き推進すると共に、その作用機序の解明に取り組む。昨年度までに構築した、カーボンナノウォール足場と、それを介した電気刺激の効果の重畳が可能な細胞培養・分化制御デバイスでは、骨芽細胞に対する高周波印加において、周波数10 Hzの場合においてのみ、特異的に同細胞の分化を抑制しつつ増殖促進が可能であることを見出した。本年度は、グラフェンエッジに様々な化学修飾を施したカーボンナノウォールを用いることで、骨芽細胞における細胞増殖・分化制御技術をさらに高精度化する一方、例えば間葉系幹細胞などを用いることで多様な組織・器官へのへの分化誘導制御を実現する。またその作用機序については、CNWマトリクスアレイから注入される光電子・磁気刺激が誘起する単一立体細胞の特性(感受性、応答性)を、分子生物学的特性(ウェスタンブロット法などでシグナル伝達)や分子化学的特性(キャピラリー泳動質量分析装置、レーザー誘起脱離法でDNA、タンパク質、アミノ酸、脂質など)の観点から解析し、幹細胞の接着と分化誘導制御のための細胞成長因子を解明するものである。またこれらの知見を体系化すると共に、再生医療に適した革新的立体細胞合成用のバイオデバイス技術として完成させる。
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Research Products
(15 results)