2016 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームを用いた超精密構造解析による価電子イメージング
Project/Area Number |
15H02038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 宏之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50312658)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 価電子イメージング / 共鳴軟X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.放射光結晶構造解析による価電子密度分布観測:t2軌道系スピネルMnV2O4,e軌道系ペロフスカイトKCuF3について,結晶構造解析を行った.信頼度因子で1%に迫る,極めて高精度・高確度の構造解析に成功した.これは現在普及しているイメージングプレートやCCD二次元検出器を用いた実験では到底達成できない,我々の手法にのみ可能な実験精度である.この結果から異方的な電荷密度分布の成分を抽出した結果,これらの系が示す軌道秩序に対応した異方的な電荷密度分布,即ち価電子密度分布の可視化に成功した.MnV2O4については,低温の軌道秩序相における価電子観測のため,磁気単分域化を試みた.磁気転移点直上においてマグネットを110軸に平行にかけてfield coolingを行なった.試行錯誤の末,95%程度の単分域化に成功した. 2.高温超伝導母物質Pr2CuO4の構造におけるアニール効果:頂点酸素を持たないT'構造を持つ高温超伝導母物質Pr2CuO4について,as-grownと還元アニール後における詳細な構造変化を,超精密結晶構造解析により捉えることに成功した.as-grownではPrサイトが2サイトに分裂し,異なる2種のPr-Oブロック層を形成していることが初めて明らかになった.このブロック層は,還元アニールにより単一のPr-Oブロック層になることも分かった. 3.放射光軟X線共鳴散乱による酸素サイト磁性の観測:マルチフェロイック物質RMn2O5において,放射光軟X線共鳴散乱実験を行い,希土類RサイトやMnサイトのみならず,酸素サイトも磁気秩序に伴って磁気モーメントが誘起されることがわかった.特にSmMn2O5では,酸素サイトと希土類サイトが混成した結果モーメントが誘起されるということが示唆され,これまでこの系では見られなかった新しいタイプの軌道混声が見出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
50K以下の低温領域において,多重散乱を回避したブラッグ反射強度測定を行い,結晶構造解析を行った.信頼度因子で1%に迫る,極めて高精度・高確度の構造解析に成功した.また,磁場印加による磁気単分域化にもほぼ成功し,軌道秩序状態における価電子イメージングに着手することができた. 放射光軟X線共鳴散乱により,マルチフェロイック物質の酸素サイトの磁性観測に成功した.また,この物質を用いてμSR実験にも着手し,酸素サイト磁性の観測も試みた.量子ビームの融合利用という点で,本計画は予想以上に進展していることが確かめられた.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は中性子回折実験が行えなかったため,29年度は海外の中性子施設で構造解析実験実験を行い,原子核密度分布の可視化に取り組む.これにより,異方的に広がった電荷密度分布と,熱振動による密度分布の「ぼやけ」を完全に分離して,より精密な価電子密度分布の抽出を目指す. 29年度もμSR実験を行い,酸素サイト磁性の観測と強誘電相発現の微視的な関係について,明らかにしたい. t2軌道系スピネルMnV2O4の軌道秩序相の100%単分域化を試み,この相における価電子イメージングを実現する.
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[Presentation] Origin of the ferroelctricity in multiferroic SmMn2O5 studied by resonant soft and hard x-ray scattering2016
Author(s)
Y. Ishii, M. Mitarashi, T. Sakakura, S. Horio, Y. Noda1, H. Kimura, T. Honda, H. Nakao, Y. Murakami
Organizer
The 11th Korea-Japan Conference on Ferroelectrics
Place of Presentation
Seoul, Korea, 600th Anniversary Hall, Sungkyunkwan University
Year and Date
2016-08-07 – 2016-08-07
Int'l Joint Research
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[Presentation] Resonant soft and hard X-ray scattering study of multiferroic SmMn2O52016
Author(s)
Y. Ishii, M. Mitarashi, T. Sakakura, S. Horio, Y. Noda, H. Kimura, T. Honda, H. Nakao, Y. Murakami
Organizer
The Joint RCBJSF-IWRF Conference
Place of Presentation
Matsue, Japan, Kunibiki-Messe
Year and Date
2016-06-19 – 2016-06-19
Int'l Joint Research
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