2016 Fiscal Year Annual Research Report
実験室における天然変性タンパク質のX線1分子動態計測装置開発
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15H02040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 裕次 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30344401)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線1分子追跡法 / 1分子動態 / ラボX線光源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発装置の基本原理であるX線1分子追跡法Diffracted X-ray Tracking(DXT)を世界で初めて実験室レベルのX線を用いて可能であることを実験で確認することに成功した。これは通常DXTで用いていた白色X線を単色化して実験を行い、非常にS/Nの良い状態で1分子動態情報を獲得する新しい計測手法の実用化に成功したことになる。このDXTの単色化は他にも非常に有効な成果と言える。放射光利用においても、ナノ秒レベルの高速測定の実現を確実なものにし、標識するナノ結晶も目標直径20nmよりも小さい標識サイズにできる可能性が出てきた。これは1997年に私がDXTを考案して以来の大きな変革を実現したことになる。特に、放射光を用いたタンパク質分子のダメージに関しても、白色光から単色光への利用は、大きなブレイクスルーとなるだろう。また、今まで、X線を用いた1時間程度の長い時時間帯の構造変化をモニターする手段が全くなかったが、この単色DXTによって、その可能性が出てきた。白色光利用を単色化しただけではあるが、使える装置が多様化できたし、ダメージに関しても楽観的になることもできた。今後は、タンパク質相互作用等のスクリーニング装置として、多くのアプリケーションが広がることを期待できる。勿論、本申請のタウに関してもその動態特性がこの単色DXTで測定できることも確認された。また、この実験で物理現象の基本であるポアソン分布への再考も検討できることが分かった。X線計測では強度分布と積算時間の関係はポアソン分布で明確に定義される。強度の標準偏差を狭くしたければ、積算時間を長くすればよい。しかし、X線光源がある時間軸で空間的に運動していたら、その関係は成立しないことを定量的に示すことにも成功したのだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験室X線光源を用いたX線1分子計測に成功した。特許も申請完了。現在、論文を執筆中。海外共同研究も進展中。周辺の反響もあり、ラボX線光源をもう一台入手することもできた。研究を加速できそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
論文を仕上げて、より汎用的な方法論へと完成度を上げる。タウに関しても基本データが測定できたので、論文化を急ぐ。
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Research Products
(3 results)