2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
駒宮 幸男 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80126060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ILC / ヒッグス粒子 / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ILCの重要な物理課題であるヒッグス粒子の詳細研究は、標準理論を越える方向を決定する上での突破口となる。様々なクォークやレプトン、ゲージボソンとの結合定数を決定し、標準理論とのずれのパターンを見ることによってこれは決定される。重心系エネルギー250 GeV、350 GeV、500 GeV全体で4 ab-1の積算ルミノシティで実験をすることを前提とした。ILCにおける測定精度を研究し、特にbクォークとヒッグス粒子の結合は0.7%程度で決定できる。超対称性理論で予言されている2ヒッグス2重項モデルが正しければ、この結合はa few %増加し、重いヒッグス粒子が1 TeV程度までは感度があることが分かった。超対称性と二律背反的なヒッグス粒子の複合粒子モデルでは、質量スケールパラメータが a few TeVまで感度があることが今までの研究で分かった。 一方、測定器に関しては、細かいセグメントを持ちかつエネルギー分解能が良い電磁カロリメータを開発してきた。これらの素子の放射線耐性の試験を神戸大学タンデム加速器を用いて重水素をベリリウム標的に当て生じた中性子を検出器に照射して、暗電流と電荷集積効率の変化を測定した。中性子照射量の正確なモニターをCR39というプラスチック検出器を用いて測定した。3個のシリコン半導体に対して、中性子照射量は2~7×1011/cm2 1MeV等価中性子量であった。この結果、漏れ電流は2~3桁の増加が観測されたものの、電磁カロリメータの読み出しのシリコンセンサーは、1TeV ILCでの40~50年間の運転でも耐えることが分かった。一方、ハドロンカロリメータに関しては、光センサーであるMulti-pixel Photon Counter (MPPC)に限定して研究を行ってきた。また、ハドロンジェットの理想的な測定方法は、それぞれの粒子をその測定を得意とする検出器で測定するのが原則だが、その際に同じ粒子のエネルギーを複数の検出器で測定してダブルカウントすることを防ぐためのアルゴリズム(Particle Flow Algorithm)の研究をさらに深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に書いたように、計画していた大きな課題は全て順調に進展した。とりわけ、ILCでの物理ではヒッグス粒子の詳細研究においては、重心系エネルギー250 GeV、350 GeV、500 GeV全体で4 ab-1の積算ルミノシティで実験をすることを前提として、測定精度を研究し、特にbクォークとヒッグス粒子の結合は0.7%程度で決定できることが分かった。超対称性理論で予言されている2ヒッグス2重項モデルが正しければ、この結合はa few %増加し、重いヒッグス粒子が1 TeV程度までは感度があることが分かった。 測定器に関しては、細かいセグメントを持ちかつエネルギー分解能が良い電磁カロリメータを開発してきた。これらの素子の放射線耐性の試験は、神戸大学タンデム加速器を用いて重水素をベリリウム標的に当て生じた中性子を検出器に照射試験をする計画であったがまさにそれを成功させた。即ち、漏れ電流は2~3桁の増加が観測されたものの、電磁カロリメータの読み出しのシリコンセンサーは、1TeV ILCでの40~50年間の運転でも耐えることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年12月に盛岡市で開催された International Linear Collider Workshop (LCWS2017)において、ILCのコスト低減を含めた計画の見直しに関して大きな進展があった。2012年に発見されたヒッグス粒子の詳細研究による標準理論を超える物理の方向を決定するという大方針は、重心系エネルギー250GeVにおいて充分な成果を上げることができるので、500 GeVではなくこのエネルギーでの加速器のコストを見積もる。エネルギーを半分に下げてもコストは半分にはならず、70%弱となる。これに加えて、今までの開発研究を踏まえて加速管製造方法の改良などによって10-12%のコスト低減が十分可能であり、全体で従来のコストの60%以下にする。このStaging scenarioにおいて期待できる物理成果の研究を行っていく。既に、この計画においてもヒッグス結合を含めたヒッグス粒子の性質の測定によって十分な物理成果が期待できることは分かっているが、更に多くの物理解析の可能性を研究する。250 GeVにおいて2ab-1のルミノシティを仮定して解析を行う。特に、ヒッグス粒子とbクォークやτとの結合と、Wボゾンとの結合との比は、新物理に対する感度が高く、500 GeVまでのエネルギーを仮定した結果と遜色ないと考えられ、更なる研究を行っていく。250 GeVでのヒッグス粒子に関する様々な物理量の測定を総合的にフィットして、超対称性理論や複合ヒッグスモデルなどの検証を行って標準理論を超える物理の方向を探っていく。さらに、この研究の過程でHL-LHCとのsynergyを追及する。 一方、ILCの測定器、とりわけカロリメータの開発研究は、東京大学から高エネルギー加速器研究機構に移ったDaniel Jeans博士が企画して行われてきたので、彼のグループとの協同研究を行っていく。とりわけ電磁カロリメータに関しては、コストも踏まえてシリコンセンサーのスペックをどの程度にするかの研究と、詳細設計を並行して行っていく。ハドロンカロリメータに関しては従来通りDESYの研究者との協同研究を行う。
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Research Products
(12 results)