2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02093
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
笹尾 登 岡山大学, 極限量子研究コア, 教授 (10115850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 浩司 岡山大学, 極限量子研究コア, 教授 (50272464)
吉村 太彦 岡山大学, 理学部, 教授 (70108447)
田中 実 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70273729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ質量 / マヨラナニュートリノ / マクロコヒーラント増幅機構 / 二光子対超放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロコヒーラント増幅機構の理解とその制御は、ニュートリノ質量分光計画の成功にとり本質的である。この増幅機構の根幹部は、パラ水素振動励起準位からの二光子対超放射過程(PSR,Paired Super-Radiance)を用いて実証されている。H27年度に於いてはPSR研究を飛躍的に高度化に取り組んだ。具体的な研究計画及びその進展は以下の通りである。 (1)外部トリガー光を用いたPSR実験:本研究ではトリガー光を別途用意し、これを独立制御することにより、増幅率に対するトリガー光のパワー依存性、タイミング依存性 (励起とトリガーの時間差)、偏光依存性などの詳細性質を明らかにする実験を行い成功裏に終了することができた。また解析を行い、論文にまとめた。 (2)対向型二光子対超放射実験の準備研究:対向型PSRでは励起レーザーを対向方向より入射し、標的中に空間的に一様な初期コヒーランスを作り出す。これは新しい形態のPSRというだけでなく、ニュートリノ質量分光にとり、光凝縮対の生成が可能になるという本質的意義がある。平成27年度はシミュレーションを中心とした準備研究を行った。特に標的原子または分子として、パラ水素、水銀原子、ゼノン原子等を対象として、必要とされるレーザー等性能や予想される結果などの観点から実験を詳細に検討した。 (3)光凝縮体の理論研究:ニュートリノ質量分光にとり、二光子凝縮体は極めて有利な状況をもたらす。平成27年度は、この光凝縮体の理論研究的性質を検討した。またこれと関連し、ニュートリノ質量分光にとり背景事象となりうる多光子遷移過程の理論的研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の当初目標は、(1) 外部トリガー光を用いたPSR実験:増幅率に対するトリガー光のパワー依存性、タイミング依存性 (励起とトリガーの時間差)、偏光依存性、標的長や密度依存性、など実験的に明らかにし、PSRの詳細を研究する、(2) 対向型二光子対超放射実験の準備研究:平成27年度はシミュレーションを中心とした準備研究を行う、(3)光凝縮体の理論研究:平成27年度は、この光凝縮体の実現に最適な方法を理論的に明らかにし、シミュレーションを行う、の3点である。実績概要にも書かれている通り、これらの全ての目標において、概ね当初の目標を到達した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な方針は変更することなく当初の予定通り研究を着実に進めたい。より具体的には次の3点を中心に研究を継続する。 (1)固体パラ水素を用いたPSR実験:固体パラ水素は、これまで行ってきた気体に比較し、密度が高い、コヒーランス時間が長いなどの特徴を有する。この特徴を生かして二光子対超放射実験を続行する。 (2)対向型二光子対超放射実験の準備研究:パラ水素分子を用いたPSR実験においては、二本の励起レーザーを同一方向より標的に入射した。これに対し、対向型PSRでは励起レーザーを対向方向より入射し、標的中に空間的に一様な初期コヒーランスを作り出す。この結果、PSRはback-to-backに放射される二光子から成り立つ。これは新しい形態のPSRというだけでなく、ニュートリノ質量分光にとり、光凝縮対の生成が可能になるという本質的意義がある。今後は実験セットアップの構築、特にレーザーの製作を行い、実験に向けより強力準備作業を推進する。 (3)バックグランド過程の理論研究:ニュートリノ質量分光にとりバックグランドを制御することは実験の成否の鍵を握る。バックグランドで「最も危険な」ものは、マクロコヒーラント増幅機構で増幅される多光子過程である。光凝縮体(ソリトン)の生成は、バックグランドを削減する非常な強力の方法の一つである。我々は平成27年度においてもバックグランドの制御法を理論的に考察し、ある条件下で可能なことを示した。今後は、ソリトン生成も含めて、このバックグランド制御法を更に詳細に検討する。同時に実験的にバックグランドを観測し、その性質を実際に観測することを目指す。
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Research Products
(35 results)