2016 Fiscal Year Annual Research Report
半導体における永久スピン旋回状態を基軸とした革新的スピン機能創出
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15H02099
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
好田 誠 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00420000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 永久スピン旋回状態 / スピン軌道相互作用 / III-V族半導体 / 量子井戸構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、永久スピン旋回状態を用いたスピン緩和抑制を確立し、さらにナノ構造制御・結晶方位制御と組み合わせた長距離スピン輸送と電気的スピン制御の両立、そしてスピンインバータに向けたチャネル要素技術を構築する。このような目的のもと、本年度は電子の拡散およびドリフトによる輸送下での長距離スピン輸送および潜在的なスピン緩和の起源について詳細にしらべた。 これまで電子スピンは半導体において輸送される場合、有効磁場を感じながら歳差運動することは知られていたが、スピンが拡散する場合とドリフト輸送される場合で異なる有効磁場が働いていることは全く知られていなかった。本研究では、この違いを明らかにするとともに、この差が生まれる原因がドレッセルハウススピン軌道相互作用に起因することを見出し、ドレッセルハウススピン軌道相互作用係数の精密測定を可能にした。通常ドレッセルハウススピン軌道相互作用係数を求める場合には、井戸幅依存性などのデータから求める必要があったが、本手法は単一量子井戸のサンプルを用いてドレッセルハウススピン軌道相互作用係数のみを評価することができるため、今後のスピン軌道相互作用の基盤技術になり得る。 さらにドリフト輸送を用いることで電子スピンを100ミクロン以上の距離輸送できることを示し、永久スピン旋回状態が示す潜在的なスピン輸送におけるポテンシャルを引き出しつつあることを確かめた。GaAs量子井戸構造を用いてバイアス電圧を印加することで、円偏光励起されたスピン偏極電子を永久スピン旋回状態でドリフト輸送させた。その結果、有効磁場がキャンセルされている結晶方位では全くスピン歳差運動が誘起されないのに対し、有効磁場が最大となる結晶方位では、スピン歳差運動しながら100ミクロン以上の距離スピン輸送できることを明らかにし、永久スピン旋回状態の大きなポテンシャルを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究が始まって2年目であるが、当初の予定通り時間分解スピン計測法が立ち上がり、全体計画に示していた永久スピン旋回状態におけるスピン緩和評価やバイアス制御によるスピン緩和抑制(これは次年度の研究を先取りして実施)が実現でき、順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はIBMとの共同研究による論文が出版され順調に共同研究がすすめられ、スピン軌道相互作用の理解が進んでいる。本年度も時間及び空間分解測定を基軸としてIBMチューリッヒ研究所との共同研究を継続しながら行っていく予定である。またNTT物性基礎研究所とも良好な共同研究がすすめられており引き続き補完しながら研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(12 results)