2017 Fiscal Year Annual Research Report
Living Matter as a Super Parallel Autonomous System
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15H02121
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164)
福田 青郎 立命館大学, 生命科学部, 任期制講師 (30421283)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生命現象の物理 / 時空間秩序 / 非線形科学 / 非平衡物理 / 自律運動 / 実空間モデル / 数理モデル / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生命体を非平衡開放系での自律的システムと捉え、生命現象の基盤を物理の視点で解き明かすことを目指す。生命現象の中でも、 1)非平衡ゆらぎが引き起こすマクロな自律運動 (nmからcmスケールへの逆カスケード)、2)DNA(一次元塩基配列)から形態形成(時空間4次元)への物理学、の2つの未解明の問題を中核的な課題として捉え、数理モデルと実空間モデルの研究を有機的・効果的に組み合わせる中で、生命現象の本質に迫ることを目指している。 具体的な成果として、一定の直流電圧印加のもとで、電極間でμmスケールのプラスチックの安定な公転運動を引き起こす実験系を構築することに成功している。ミクロな系では、常にBrown運動によるゆらぎの効果があるが、そのような条件下、定常的な運動を起こすことが可能になったことは、重要な成果であると考えられる。 更には、外部からのゆらぎのもと、ミクロな閉鎖系では、自律的に、サイズの異なる物体が細胞サイズの微小空間内でミクロ相分離を起こすことを、理論計算で明らかにした。また、このような理論的な考察に基づき、実験系を設計し、振動盤上で特異的な物体の局在化が可能であることを報告している。自律運動系の研究では、水層に浮かべた油滴に自律運動を調べた。その結果、等温条件下化学マランゴニ効果により、複数の液滴が同調した上下運動を行うことを見出し、論文で報告した。一方、DNA関連では、ゲノムDNAの放射線、紫外線、超音波刺激などにより引き起こされる二本鎖切断に関して、定量的な計測をすすめ、その損傷に対するDMSOなどの保護作用についても複数の論文をまとめている。 新規性の高い重要な研究成果としては、培養細胞を3次元の組織体に組み立てるための手法について報告している。これは、共存する高分子のdeplation作用を利用するものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)非平衡ゆらぎが引き起こすマクロな自律運動 (nmからcmスケールへの逆カスケード)、2)DNA(一次元塩基配列)から形態形成(時空間4次元)への物理学 この二つの主要な課題について、順調に研究が進展し、国際誌への発表も着実に進めてきている。本年度は、それに加えて、培養細胞を3次元の組織体に組み立てるための手法について報告している。これは、共存する高分子のdeplation作用を利用するものとなっている。ゲルなどの生体異物を用いることなく、培養溶液中で細胞を組織化する新手法として、今後の再生医学、細胞工学への応用が期待されるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)非平衡ゆらぎが引き起こすマクロな自律運動 (nmからcmスケールへの逆カスケード)、2)DNA(一次元塩基配列)から形態形成(時空間4次元)への物理学。 これらについては、順調に研究が進展中であるので、さらに研究を加速させていきたいと考えている。 細胞の三次元組織化の新たな課題についても、研究をさらに発展させ、再生医学や細胞工学関係の研究者との共同研究も位置付けて、応用展開を計りたい。
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Research Products
(17 results)