2016 Fiscal Year Annual Research Report
高性能海底地震計の革新的機能高度化へ向けた開発研究
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15H02122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩原 肇 東京大学, 地震研究所, 教授 (60211950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉岡 裕子 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00359184)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固体地球物理学 / 広帯域地震学 / 海底地震計 / 底層流 / 自己浮上式 / 自律動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
高性能な観測能力を持つが潜水艇での作業が必要な次世代型広帯域海底地震計(BBOBS-NX)を自律展開設置・自己浮上回収方式へと機能高度化させた新型機(以後、NX-2G)の具体的機構設計を行い、2016年10月には最初の実海域試験を実施した。この結果を基に、2017年4月に実施予定の長期試験観測開始に向け、実用的試験機としての改修を進めた。 昨年度は、BBOBST-NX(地震・傾斜観測用)の水面投入から着底時まで、加速度および画像記録で状況確認を行い、降下中に±12度を超えるような傾斜変動が数秒周期で継続し、その最後の姿勢が着底時の傾斜を決定している事が判明した。 NX-2Gの方式では、海底に貫入させたセンサー部を回収時に引き抜くため約75kgf以上の浮力を必要とするので、不足分を補うために浮力体を追加した。その際、記録部であるチタン球が降下中に起こす傾斜変動を抑制することを狙い、チタン球赤道部3箇所から浮力体への結束を行った。 実海域試験は、無人潜水艇(ROV)傭船により実施し、NX-2G試験機には、昨年と同様にビデオカメラおよび加速度ロガーを装着し、投入から着底までの状態を記録した。ROVによりNX-2G試験機を捜索、ほぼ傾斜せずに適切な状態で着底したこと、ならびに観測状態・回収状態への2回の遷移動作がほぼ正常に行われることを確認した。加速度ロガーの記録を調べると、昨年のBBOBST-NX単体での降下中に見られた大きな傾斜変動が、大幅に減少していることが分かった。海面からの投入直後の傾斜変動記録を見ると、追加した浮力体が海中に引き込まれるまでの間はNX-2G試験機も大きな傾斜変動をしているが、浮力体による張力が効くと傾斜変動が抑制される様子が明確に見られた。この方法により、BBOBS-NXの設置においても、着底時の大きな傾斜の発生を避けられることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本開発研究での最大な課題は、BBOBS-NXの着底時に約半数の確立で発生していた、使用する高性能地震センサーの正常動作の許容範囲を越える大きな傾斜の発生への対策であった。これを、予想以上に簡易な方法で抑制させられることが、今年度の実海域試験で確認できたため、現在のNX-2G試験機の構成で、実用的観測システムとして使える可能性が高まった。 海洋研究開発機構の研究船利用公募には引き続き不採択となっていたが、今年度の本研究費の多くを無人潜水艇傭船へ投資したことによる、上記の有益な成果を挙げることができた。来年度の同公募も不採択であったが、2017年4月に実施する関連した観測研究での研究船利用の航海中に、1年程度以上の長期比較試験観測の開始を実施できることになった。 以上のように、ほぼ当初計画に沿ったNX-2Gシステム開発研究の進捗状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度以降の研究では、このNX-2G試験機の実用レベルでの観測能力確認とその改良を進める。まず来年度は、2017年4月に実施する別の観測研究プロジェクト[特別推進研究(代表:日野亮太)]での、BBOBST-NXの設置・回収航海の際に、福島県沖でのBBOBST-NXの設置と併せて、NX-2G試験機での長期試験観測を開始する。両者を同一地点に設置、かつ既設のBBOBSもあるため、3方式での比較観測データを取得できる予定である。設置期間は1年以上を想定している。また、NX-2Gシステムで狙う機動的海底傾斜変動観測の一環として、2015年7月に房総沖の海域に設置したBBOBST-NXの回収も予定している。これら、4月航海での宮城沖の海域に設置していたBBOBST-NXの回収と合わせ、2地点で約2年間の海底での傾斜変動記録が取得されるので、2013~2014年に房総沖で得た記録だけでは不明であった現象に対して、原因解明・解析手法の高度化が進むことを期待している。 H30年度は前年度設置したNX-2G試験機を回収、データを評価し、本方式での観測能力を確認する。これまでの研究成果を取りまとめ、国内外の関連学会・学術雑誌での公表を行う。
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Research Products
(1 results)