2016 Fiscal Year Annual Research Report
超高性能有機-無機ハイブリッドLED(HLED)の開発
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15H02203
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
城戸 淳二 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (50214838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 貴之 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (20751811)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機-無機ハイブリッドデバイス / 量子ドット |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度では無機ナノ粒子とアミン系高分子材料を電荷注入層に用いた有機ELデバイスの高性能化とハロゲン化鉛系ペロブスカイト量子ドットの開発をそれぞれ実施した。 1. 有機-無機ハイブリッド電子注入層による有機ELデバイスの低電圧化と長寿命化 アミノ基含有の脂肪族系高分子材料ポリエチレンイミンは、アルコール溶媒に可溶なことから塗布成膜可能な電子注入材料として近年大きな注目を集めている。ポリエチレンイミンは酸化亜鉛などの酸化物との積層化において、大きな双極子モーメントを形成し、電子注入障壁を大幅に低減することが知られている。しかしながら、駆動安定性が乏しく有機ELデバイスの長寿命化が課題である。そこで、アルカリ金属と有機配位子から成るリチウムフェノラート錯体をポリエチレンイミンに添加しすることで、ZnOの仕事関数をさらに低減すると同時に、駆動安定性の大幅な改善に成功した。 2. ハロゲン化鉛系ペロブスカイト量子ドットLEDの開発 ハロゲン化鉛系ペロブスカイト量子ドットは優れた発光量子収率と半値幅が狭く色純度の高い発光スペクトルを示すことから、次世代型発光デバイスへの展開が期待されている。粒子サイズおよび塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンにより発光色を調整することができる。また、長鎖アルキル配位子により量子ドット表面を被覆することで、有機溶媒への分散性が向上し塗布印刷プロセスによるデバイス作製が可能になる。しかしながら、薄膜状態では量子ドットの凝集により発光量子収率が低下し、ペロブスカイト量子ドットLEDの発光効率は6%程度に留まっている。そこで、薄膜状態における凝集の抑制と高い発光量子収率の発現を目指し、ホットインジェクション法を用いた量子ドットの合成法とエステル溶媒による洗浄方法を確立した。また、ペロブスカイト量子ドットLED開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 有機-無機ハイブリッド電子注入層による有機ELデバイスの低電圧化と長寿命化 酸化亜鉛ナノ粒子とポリエチレンイミン誘導体の多積層膜を電子注入層に応用し、アルカリ金属とリチウムフェノラート錯体をポリエチレンイミンに添加することで酸化亜鉛の仕事関数が低減することを明らかにした。量子化学計算および吸収スペクトル測定からポリエチレンイミンとリチウムフェノラート錯体の相互作用が示唆された。リチウムフェノラート錯体がポリエチレンイミンのアミノ基に近接することでより大きな双極が形成すると考えられる。また、緑色リン光有機ELデバイスにおいて低電圧化と長寿命化の両立に成功した。得られた結果はすでに学会発表を終えており、論文掲載を予定している。 2. ハロゲン化鉛系ペロブスカイト量子ドットLEDの開発 ホットインジェクション法を用いて緑色ペロブスカイト量子ドットCsPbBr3の合成を完了している。反応終了後の精製過程を重点的に検証し、通常使用するアルコール洗浄よりも酢酸ブチルなどのエステル洗浄においてより不純物を除去できることを明らかにした。また、量子ドット表面を被覆する配位子の交換手法も同時に進めており、特に金属イオン含有配位子用いることで薄膜状態においても高い発光量子収率を発現することを確認している。さらに、緑色ペロブスカイト量子ドットLEDを作製し、世界最高水準の発光特性(8%)を実現しており、今後さらなる高性能化が期待できる。 得られた結果は、論文掲載および学会発表をそれぞれ予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
塩素やヨウ素などの金属イオン含有の配位子を用いて発光色の制御を検証し、青色および赤色ペロブスカイト量子ドットLEDの開発を進める。すでに長鎖アルキルアミンにヨウ素を付与した配位子の合成に着手している。また、長鎖アルキル配位子は熱的安定性が乏しく、電荷の注入・輸送を阻害するため、デバイス特性の低下の要因になるため、短鎖アルキルや無機系配位子も同時に検討する。さらに、現状の配位子は上層の塗布溶媒に対しても高い溶解性を示すため、塗布印刷プロセスによる多積層膜の形成が困難である。このため、成膜した量子ドットの不溶化手法についても探索を開始する。得られた知見から、量子ドットの合成・精製・配位子交換・物性評価、発光特性を相互にフィードバックし、薄膜状態における無放射失活の抑制と高い量子効率を追求し、高性能なペロブスカイト量子ドットLEDを実現する。得られた結果を取りまとめ学術論文および学会発表を行う。
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Research Products
(7 results)