2017 Fiscal Year Annual Research Report
氷成長抑制ポリペプチドと温度応答性物質を用いた水・氷・霜の付着しない機能面の研究
Project/Area Number |
15H02220
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩原 良道 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (50144332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 直毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (60243127)
大久保 英敏 玉川大学, 工学部, 教授 (80152081)
灘 浩樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90357682)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱工学 / ポリペプチド / 機能面 / 着氷防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、空気流中の水滴、雪、氷粒子、水流中の氷が付着しないように、表面性状が温度に応じて変わることができる新規な透明機能面の確立することを目的とする。3年目である平成29年度は、以下の結果を得た。 1. シランカップリング剤の一つである3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を用いて、氷成長抑制効果のあるポリペプチドをコーティングしたガラス面を作製した。そのコーティング面に、水滴を滴下して冷却する実験を行った。その結果、ガラス面と比べて、過冷却温度が低下し、水滴凍結後の氷の付着力が低くなった。したがって、創製したコーティング面は氷結晶成長をより遅らせるのみならず、付着した氷の除去がより容易である有望な面であることが明らかになった。 2. 1で創製したコーティング面上の水滴の凍結に少なからぬ影響を与える冷却面上の霜の成長とそれによる霜層の拡大を抑制することを目的として、測定を行った。当初計画には 無かったが、微細加工により数十マイクロメートルの格子状の窪みを設けたガラス面を多数製作し、これらを用いて、霜の発生・成長を観察した。その結果、平坦部において水蒸気の凝縮により発生した水滴表面から微小な霜の発生が見られたが、霜の合体、及びそれに伴う大規模な霜層の発生が遅らされることが明らかになった。 3. 2で用いた格子状窪みを設けたガラス面にAPTMSをコーティングした新たな面を創製した。この面を用いて、静置水滴の実験を行った結果、過冷却温度と氷の付着力は、平ガラス板に比べて優位性は無かった。他方、衝突水滴の凍結実験を行った結果、とくに窪みの幅とピッチが狭い場合に、凍結完了時間が大幅に伸びることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ポリスチレン、ガラス、およびアルミニウム基材として、氷成長抑制効果のあるポリペプチドをコーティングした表面の測定を行った。その結果、耐久性や測定法の有効性の観点から、ガラス面が最適であるとの結論を得た。そこで、年度初めの計画とは異なるが、ガラス面を基材とし、シランカップリング剤を用いてポリペプチドをコーティングした面に焦点をしぼり、実験を推進した結果、多くの新しい知見を得た。 2. 低温コーティング面上の水滴の凍結時の温度測定に関して、従来の水滴内への熱電対の挿入は、水滴が移動しやすい場合には適切ではない。そこで、液滴の表面温度を非接触で測定するために、赤外放射温度計を購入する予定で、面上の温度分解能に優れた機種も選定していた。しかしながら、その後の調査で、温度精度が熱電対に比べてかなり低いことが判明したので、赤外放射温度計の購入を断念し、温度測定は熱電対で行うこととした。 3. 過冷却水滴、あるいは小さな水滴を実現するために、ディスペンサーを購入した。機種の選定、および購入後の較正曲線作成に時間を費やしたために、過冷却水滴の凍結実験装置の作製が遅れたが、小さな水滴の滴下、及び滴下前の水滴の温度測定が可能であることを確認できた。 4. 分担者の大久保教授(玉川大学)の装置を用いて、コーティング面の着霜の測定を行った。この結果と経験を実験装置の作製に生かせることができることを確認した。 5.フェーズフィールド法を用いた衝突液滴の凍結に関する数値シミュレーション、およびポリペプチドコーティング面上の氷核と水に関する分子動力学シミュレーションを行い、これらのシミュレーションは有望であることを確認した。 以上のことより、2,3は予定よりやや遅れているものの、5は予定どおりであり、1,4は予定より進んでいることから、総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画および平成29年度の進捗状況に鑑み、平成30年4月の交付申請書では当初計画から一部修正する。平成30年度の研究計画について、その概要を以下に示す。 ①具体的には、ガラス面への不凍ポリペプチドの固定法を改善する。②コーティング面の耐久性を試験して、実用性を議論する。③過冷却水滴を伴う気流の実験装置内にコーティング面を置いて、衝突による凍結を測定し、機能面の凍結遅延特性を調べる。④機能面上に発生する霜の水滴凍結への影響を調べる。⑤フェーズフィールド法を用いて、凍結現象を予測する数値シミュレーション法を改良して、3次元水滴の凍結を予測する。⑥分子動力学シミュレーションにより、ガラス面に固定した不凍ポリペプチドと氷との相互作用の予測を試み、ナノレベルにおけるコーティング面の氷成長抑制メカニズムを調べる。⑦得られる結果を元に、コーティング面の性能と特徴をまとめる。 なお、平成29年度末に分担者と行った成果報告会は有意義であったので、平成30年度も実施する。また、それ以外にも、学会講演会などの機会を捉えて、研究成果を発表するとともに、情報交換を行う。なお、国際共著論文の作成も行う。
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Research Products
(18 results)